2012 Fiscal Year Annual Research Report
サル大脳皮質-基底核ループの歩行制御機序:ヒト二足歩行障害の病態解明を目指して
Project/Area Number |
23650209
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
中陦 克己 近畿大学, 医学部, 講師 (60270485)
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Keywords | 歩行運動 / ニホンザル / 単一神経細胞活動 / 一次運動野 / トレッドミル |
Research Abstract |
本年度では無拘束の状態で四足歩行(QL)と二足歩行(BL)を交互に行うサルの一次運動野と補足運動野の体幹・下肢領域から単一神経活動を記録し、四肢・体幹の筋活動も同時に記録した。結果は3点に要約される。 1.QL中の体幹・下肢筋は歩行周期に一致して相動的に活動した。これらの相動的活動はBL中において振幅・期間ともに増加した。特に体幹筋ではその傾向が著しく、相動的活動に持続的活動が重畳した。BL中の活動ピークの殆どは歩行周期内の一脚支持期に一致した。 2.一次運動野から記録された細胞(n=97)の殆どはQL中に相動的(73%)または相動/持続的(19%)に活動し、持続的に活動する細胞(6%)は少なかった。一方BLでもQL中の活動様式は維持された(相動的:67%,相動/持続的:24%)。BL中の相動的活動をQLと比べると、その振幅は有意に増大したが期間は延長しなかった。更にBL中の活動ピークの殆どは一歩行周期内で一脚支持期を避けるように他の期間に分布した。 3.補足運動野の細胞(n=13)では、QL中に相動的に活動したもの(15%)は少なく、多くが相動/持続的(31%)または持続的活動(31%)を示した。一方BLではQL中の活動様式を変化させる細胞も多く、殆どが持続的活動成分を示した(相動/持続的:54%,持続的:38%)。 以上の結果より、大脳基底核と運動ループを構成する一次運動野と補足運動野が歩行制御の異なる側面を担うことが示唆され、一次運動野は下肢運動の礎となる脊髄神経回路網の律動的活動を一歩毎にオン・ラインで修飾し、補足運動野は体幹姿勢または体幹・下肢の協調運動に関与する皮質下機構の活動を修飾すると考えられる。これらの皮質領野に備わる歩行修飾機能は、大脳の機能が最も分化するヒトにおいてより重要な役割を果たすと推察され、前頭葉性歩行障害の病態を説明し得る神経基盤として提出できる。
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