2013 Fiscal Year Annual Research Report
近赤外分光法(NIRS)を使った脳機能研究に内在する皮膚血流問題の解決
Project/Area Number |
23650220
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
高橋 俊光 大阪大学, 生命機能研究科, 助教 (00250704)
|
Keywords | 近赤外分光法 / 皮膚血流 / 脳機能計測法 |
Research Abstract |
近赤外分光法(NIRS)を用いた脳機能計測では、その計測信号に脳活動由来の成分の他に、課題の心的負荷に伴う自律神経性の血流動態の影響が少なからず存在することを明らかにした研究成果を、本研究期間にまとめ、論文発表した(Takahashi et al., 2011)。本研究の目的は、この一連の成果をさらに掘り下げ、自律神経性の前額部皮膚血流の生理機序の理解を目指すことであった。 最終年度は、課題中の前額部皮膚血液動態が他の部位の皮膚血液動態とは異なることを明らかにした。具体的には、言語課題中の前額部と指尖の皮膚血液動態を比較するために、8名の健常被験者に対し、前額部のDoppler皮膚血流計と指尖部のpulse oximeterの同時計測データを調べ、それぞれの計測信号に含まれる脈波成分の課題による変化を詳しく解析した。その結果、脈波の頻度変化は両部位とも同相であるのに対し、振幅変動が逆相であることを示した。また、頻度および指の振幅と異なり、額の振幅変化にのみ課題の繰り返しによる順応がみられた。これは課題負荷に伴う交感神経亢進による前額部皮膚血液動態が、他の部位のものとは異なる複雑な生理機序を持つことを示す。 また課題に伴う皮膚血流の時空間分布を調べるため、14名の健常被験者に対し課題中のfMRI信号変化と前額部1点のDoppler皮膚血流計による皮膚血流変化とを同時計測した。しかし前頭洞による磁化率アーティファクトの影響のため、種々に計測の工夫を行ったものの、正確な位置の同定を保証できる良好な計測には今一歩至らなかった。 精神医学領域では、前額部のNIRS応答波形によるうつの鑑別診断が行われているが、本研究からこれは前額部特有の複雑な皮膚血液動態も反映している可能性が考えられる。従って、認知課題負荷時の前額部皮膚血液動態の生理機序の解明は、臨床応用においても重要であると考えられる。
|