2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650226
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
中谷 和宏 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (70109388)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 亮 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70054020)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | Echinococcus shiquicus / チベット包虫 / scid マウス / 増殖形態 / 凍結保存 / in vitro |
Research Abstract |
本研究は、2005年に中華人民共和国の四川省西部に位置するチベット高地において発見された新種Echinococcus shiquicus (チベット包条虫)の包虫について、その生物学的特性を多面的に追求し、将来的にはヒトへの臨床的応用を目指している。本年度は、当地において混在しているE. granulosus (単包条虫) ならびに E. multilocularis (多包条虫) の包虫を実験用マウスに感染させて発育比較を行った。さらに、E. shiquicusと遺伝学的に姉妹種であるE. multilocularis の両包虫についての凍結保存も試みられた。 各包虫を三種のマウスの腹腔に接種したところ、E. shiquicus はいずれにおいても「発育速度が極めて遅い」、「多房性と単房性の両性を有する」、「クチクラ層が極めて薄い」、「マウスの腹腔や肝臓表面における宿主炎症性反応が低い」等、特異な発育様式を示すことが判明した。 E. shiquicusとE. multilocularis の包虫のホモジネートをそれぞれ凍結防止剤DMSOで保護し、cryotubeに分注して凍結保存を行った。4℃で30分の前冷却、-28℃で30分の凍結、-80℃30分の凍結を経て、液体窒素で-196℃で18日間凍結保存した。その後、37℃で融解、MEM培地でDMSOを洗い流し、BALB/cマウス各10匹づつの腹腔へ感染接種した。E. multilocularis 感染マウスを約5ヶ月後、E. shiquicus感染マウスを約10ヶ月後に剖検して各包虫の形態観察を行う予定である。 培養試験については、これまで報告されている多数の研究者の成果を検討して来た。使用される各包虫のマウス腹腔での増殖感染は終了しており、平成24年度よりin vitro実験を本格的に開始する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivo実験:E. granulosus, E. multilocularis, E. shiquicusの包虫を免疫不全マウスや近交系マウスの腹腔へ接種し、増殖した包虫を採取して包虫の形態、特に単房性、多房性についての比較がなされた。同時に、包虫の発育・分化と宿主の炎症性細胞や線維性結合織の増成度、病態との関連を解析中である。 凍結保存:E. shiquicusとE. multilocularis の包虫を液体窒素で18日間保存し、融解後にそれぞれ10匹のマウスの腹腔へ接種した。現在、感染後11週経過しているが、全てのマウスが生存しており、腹部の膨満度を観察中である。 in vitro実験:実験動物の代替モデルとして培養系の確立を目指しており、E. granulosus やE. multilocularisについては培地の組成が研究されているので、それらをベースにしたE. shiquicusの培地組成や培養条件を次年度より本格的に探る予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivo実験の大半が終了しており、以後の正確な分析が残っている。凍結保存が行われた虫体のマウス腹腔への接種は完了しており、発育・増殖経過を待機中である。in vitro実験は緒についていないが、本年度より積極的に実施しなければならない現状である。 新種Echinococcus shiquicusは、その存在が知られてから7年が経過したが、基礎的な研究は緒について間もない。これまでの本研究の成果の中から幾つかの今後の課題が輪郭を帯びている。その一つに臨床への応用として分担者である伊藤亮の専門領域の血清診断があり、本研究の成果を基に抗原作成のチームが別途立ち上がっている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
備品として必要な高性能無菌実験台(クリーンベンチ)、液体窒素プログラムフリーザーとボンベ、CO2インキュベーターはすでに完備しており、平成24年度の研究費は全てマウス、培地、薬品、ピペット用チップ、培養用試薬などの消耗品の購入費に充てられる。
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Research Products
(3 results)