2011 Fiscal Year Research-status Report
食虫目スンクスを用いた新規な遺伝子改変モデル動物の開発
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23650233
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
前多 敬一郎 名古屋大学, 農学国際教育協力研究センター, 教授 (30181580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平林 真澄 生理学研究所, 行動・代謝分子解析センター, 准教授 (20353435)
井上 直子 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (90377789)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | スンクス / 食虫目 / 遺伝子改変動物 / GnRH2 |
Research Abstract |
食虫目のスンクスにおける生殖工学技術は未開発であり、生理学的解析は進んでいない。本研究では、食虫目であるスンクスを用いて詳細な生理学的解析を可能にすることを目標に、1.全身性に蛍光物質Venusを発現した遺伝子改変スンクスの作出、2.GnRH2 遺伝子特異的にVenusを発現する遺伝子改変スンクスを作出することを目的としている。1.全身性Venus遺伝子を発現するスンクスの作出 サイトメガロウィルス由来のCMVエンハンサーに、chicken beta-actinプロモーター、Venus遺伝子をつなげたコンストラクトを卵細胞質内精子注入法(ICSI)と前核形成卵精子注入法(PNMI)にてスンクス卵子に注入し、偽妊娠スンクスに移植したが、いずれも産子は得られなかった。これらの理由を検討すべく、スンクスの初期胚発生の解析を行った。これまでスンクスの初期胚に関する詳細な研究は全く行われていないため、マウスやラットで使用されている数種類の培養液を用い、受精卵の初期胚の体外培養を行ったが、胚盤胞まで発生させることができず、現在偽妊娠スンクスへの受精卵の胚移植法とあわせて、再検討中である。2.GnRH2 遺伝子特異的にVenusを発現する遺伝子改変スンクスの作出 本年度は、Genome Walking法によりスンクスGnRH2遺伝子のクローニングを行った。転写開始点より約1kbp上流域のTATAボックスとCAATボックスを含む部分配列を取得できた。今後さらに上流のプロモーター領域を取得し、解析を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスで報告されている遺伝子改変動物の作出法をもとに、スンクスにおいて卵細胞質内精子注入法(ICSI)と前核形成卵精子注入法(PNMI)にて遺伝子導入を行った卵子を偽妊娠スンクスに胚移植したが、いずれも産子を得られなかった。ICSIによる遺伝子導入後、体外培養にて胚発生を行ったところ、4細胞期まで発生が継続することが確認できたが、胚盤胞までは確認できなかった。胚の体外培養法や胚移植法について、これまでマウス、ラット、ウサギなど他の動物で報告されている方法をもとに、受精卵を用いて検討を行ったが、現在のところまだ産子が得られておらず、胚の体外培養法や偽妊娠スンクスへの受精卵の胚移植法の確立ができていない。スンクスでは、胚発生や胚移植に関する報告がこれまで一切なく、新たに検討する必要があり、研究の進行が遅れている。 スンクスは実験動物であるが、自家繁殖で維持しており、1頭あたりの産子数が3~4匹と少ないため供試動物の数が不足している。また過剰排卵させた個体からの採卵数が1個体あたり10個程度と少なく、研究の進行の遅れにつながっていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はまず、胚の体外培養法や偽妊娠スンクスへの受精卵の胚移植法の確立を行う。その後、引き続き卵細胞質内精子注入法(ICSI)と前核形成卵精子注入法(PNMI)にて遺伝子導入を行い、全身性Venus遺伝子を発現するスンクスの作製を試みる。 スンクスGnRH2遺伝子のクローニングについては、GnRH2遺伝子プロモーターの上流域の取得を進め、ルシフェラーゼアッセイによりプロモーター解析を行う。得られたプロモーター領域にVenus遺伝子をつないだコンストラクトを作製し、スンクス胚に導入して、GnRH2 特異的にVenus 遺伝子が発現した遺伝子改変スンクスを作製する。 スンクスにおけるジフテリアトキシン作用の解析を行う。現在Cre-loxP システムを利用できない動物ではジフテリアトキシンA(DTA)を用いて遺伝子欠失動物を作出するシステムが確立されている。スンクスでもこのシステムが利用できるかどうかの検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度は研究の進行が遅れたため、予定していた研究費の遂行ができず研究費の繰り越しが生じた。来年度は、研究計画や研究費の執行に大きな変更はないが、今年度購入できなかった実験試薬類(麻酔薬、PCR用試薬、プライマー合成、チューブ・シャーレ類、胚培養試薬)の購入を行い、研究の推進を行う予定である。また、動物のエサ、床敷き、飼育ケージ、水瓶の購入を行い、実験に使用する動物の増産を行う。
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[Journal Article] Kisspeptin neurons mediate reflex ovulation in the musk shrew (Suncus murinus).2011
Author(s)
Inoue, N. Sasagawa, K. Ikai, K. Sasaki, Y. Tomikawa, J. Oishi, S. Fujii, N. Uenoyama, Y. Ohmori, Y. Yamamoto, N. Hondo, E. Maeda, K. Tsukamura, H.
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Journal Title
Proc Natl Acad Sci U S A.
Volume: 108
Pages: 17527-17532
DOI
Peer Reviewed
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