2013 Fiscal Year Annual Research Report
電圧を用いた実験動物の組織・臓器の長期超低温保存の基礎的研究
Project/Area Number |
23650244
|
Research Institution | Central Institute for Experimental Animals |
Principal Investigator |
江藤 智生 公益財団法人実験動物中央研究所, その他部局等, 研究員 (30370175)
|
Keywords | 組織・臓器の保存 / 実験動物 / 保存 / 超低温保存 / Cryobiology / 卵巣 / 精巣 / 電圧 |
Research Abstract |
本年度は、マウス精巣に電圧を加印しながら冷却して、超低温下で保存する方法を検討した。採取直後のBDF1系統の精巣をチューブに入れて、独自開発した電圧冷却機器に導入、5000Vを加印しながら室温から-30℃まで-0.5℃/minで冷却後に液体窒素に入れて3週間保存した。保存した精巣の融解は、液体窒素からクライオチューブを取り出し、直ぐに5000Vを加印した室温の電圧冷却機器内に移し10分間静置して行った。冷却と融解時に電圧を加印または同方法で非加印の精巣は、体外培養又はマウスC57BL/6系統に移植した。精巣は融解後に分割してアガロースゲルに乗せて体外培養を行った。体外培養後、電圧を加印・非加印した実験区共に、1~2週間後には変色して臓器の形態が崩れた。オスマウスに移植した精巣は、3週と5週後にレシピエントを安楽死してから摘出した。観察の結果、加印した精巣の外部周辺には血管の縦走が確認できた。さらに切片標本を作製したところ、精子形成は見られなかったが、組織の一部の細胞は生存していた。 本研究を通して、実験動物の組織・臓器の中長期間の保存を試みた。保存した卵巣と精巣からは配偶子又は次世代は出来なかったが、何れの臓器も融解後に生体内に移植すると、支持組織・細胞の一部が生存する事が確認された。これらより、超低温下での組織・臓器の保存の可能性が考えられた。しかし、融解後に臓器本来の機能を正常に稼働させることは出来なかった。要因として考えられる点は、冷却保存時の氷晶形成による細胞の破壊よりも低温下の蛋白変性等、つまり細胞内物質の保護が充分でなかったことが示唆された。今回の研究により、組織・臓器の保存について、研究の焦点がより核心に近づいたと考えられた。そのため以降の研究では、例えば臓器冷却前に凍害保護剤を入れた溶液を臓器に環流する等を行い、細胞内物質を保護することを検討したい。
|