2011 Fiscal Year Research-status Report
2枚のイメージングプレートを用いた新しいイン・ビボ・イメージング技術の開発
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23650245
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
松橋 信平 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (50354965)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | イメージングプレート / イン・ビボ・イメージング |
Research Abstract |
H23年度は、イメージングプレート2枚を使ってマウス体内にある線源の2次元形状(投影像)を画像として再現する、新しいイメージング法のアイデアについて、原理を検証と計測法としての技術基盤を構築するための研究を実施した。IPを用いた計測では、BAS-IP 2040MS(20x40 cm, t=486μm)を2枚重ね、その上に186keVのガンマ線を放出するRa-226密封線源(51kBq、φ=1mmの点線源)をモデル線源として置き15分間露光した。露光後のIPはFLA-7000で読み取り、画像解析ソフトImage-Jで検出強度分布を解析した。また、計算コードはEGS4を用い、線源と2枚のIPの空間的な配置をIPを用いた計測と同じに設定し、点線源から186 keVの光子を等方的に1x10^6個放射させたときのIPの単位面積当たりのエネルギー付与量の分布を計算した。IPを用いた計測では、上(IP-1)下(IP-2)いずれのIPでも、点線源の直下で最大検出強度が得られ、この位置(重心と呼ぶ)から距離が離れるにつれて検出強度が減少する同心円状の強度分布が得られた。重心における検出強度の比は、IP-1:IP-2=1:0.7となり、IP-1の通過による減衰や散乱で約3割のエネルギーが失われることがわかった。IPを用いた計測結果とコード計算で得られた結果から、重心からの距離に対する検出強度とエネルギー付与量のグラフを作成した。EGS4による計算で得られたIP-1での最大エネルギー付与量が実測での最大値と等価であると仮定して両者を比較したところ、上下のIPとも実測値と計算値の変化に良い一致が見られた。この結果は、IPに付与されたエネルギー量とIPに保存された検出強度に比例関係があること、即ち、線量と検出感度に比例関係にあり、IPを用いた計測から線量を求められることを示唆すると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度に予定した、IPを用いた基礎データの収集と解析、計算コードを用いたシミュレーションをそれぞれ実施し、その結果から、2枚のIPを用いた新しいイメージング計測法が原理的に十分実施可能であることを明らかにできた。IPの読み取り装置が新たに導入したFLA-7000に変わったことにより、従前使用していた装置とのデータの互換性に関する検討を行う必要があったため、このための時間を要したが、当初予定のデータ取得と解析等を着実に実施し、最終的には、本年度の目標を達成できた。これ以外に、研究の進展を大きく阻害する要因はなく、順調に研究を進めることができた。研究を進める過程で、本研究課題で提案した新しいイメージング法について、学術研究集会において紹介し、研究者と議論することにより検討を加えたほか、イメージングプレートの開発に直接携わった宮原諄二氏に指導を頂く機会を得るなど、人的なネットワークも含め、研究を進めるための環境を積極的に進めることができた。以上のことから、研究は概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
H23年度の研究を当初予定通りに進めることができたことから、H24年度以降も当初計画に従って研究を進める。H24年度は、より実際の線源に近い2次元的なモデル線源(面線源)として、ガンマ線放出核種を塗布したろ紙を用いた計測データの取得と解析を行う。ガンマ線放出核種としては、がんの治療を行いながら治療効果をモニタリングできるルテチウム-177(Lu-177)を用いる。2枚のIPに記録されたガンマ線検出強度分布に対し、平成23年度に得たIPによるガンマ線の吸収や拡散・散乱の補正法を適用することにより、線源の2次元画像の再構築を目指して研究を実施する。具体的には、真円あるいは正方形のろ紙にLu-177を塗布したモデル線源を2枚のIPを用いて計測し、取得した計測データの解析によりモデル線源の形状を導出するアルゴリズムを作成する。次のステップとして、不定形のろ紙にLu-177を不均一に塗布したモデル線源を用いて、開発を進める解析法、アルゴリズムが適用可能かを評価する。より精度の高い手法とするために、EGS4によるシミュレーションによる検証を行い、解析法におけるIP-1によるガンマ線の吸収や拡散・散乱の補正項とアルゴリズムを最適化する。また、本課題の最終的な目標である、マウス体内の線源の2次元画像取得計測を行うために、モデル線源をマウス体内に導入する方法について検討する。最終年度となるH25年度には、開発を進めた、2枚のIPを用いた計測法を実際のマウスを用いた計測に適用し、その妥当性・有用性を評価すると共に、計測法としての最適化に関する研究を進め、新規2次元イメージング法を完成させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度は当初予定通り、Lu-177を線源として用いた計測を計画している。このために必要となる線源購入費やRIを用いたイメージング実験のための研究消耗品費、研究成果を学術集会等で発表するための費用、研究を進めるための打合せのための旅費や謝金等の支出を予定している。イメージングプレートはH23年度に購入したものを引き続き使用できるほか、当初予定になく新たに必要となる高額な物品等がないため、当初予算内で研究の実施が十分可能である。
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Research Products
(1 results)