2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23650247
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 信樹 北海道大学, 情報科学研究科, 准教授 (30271638)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 細胞力覚 / メカノトランスダクション / 細胞局所機械刺激 / 心筋細胞 / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
本年度は,細胞に微小な気泡を接触させた状態で,低音圧超音波を加えることにより細胞の局所刺激を実現する装置の開発を目的とした.超音波の音響放射力は気泡にのみ加わり細胞には直接作用しないので,気泡の位置を光ピンセットで制御することにより細胞の局所を1~数ミクロンの空間分解能で機械刺激できる.装置実現のため,以下の3つの要素技術について検討した.○光ピンセット部 本方法では,微小気泡を光ピンセットで捕捉・移動することにより,細胞の刺激位置を制御する.水よりも屈折率が小さい気泡を捕捉するために,光ピンセットの光ビームは,リング状の強度分布を持つラゲールガウシアンビーム(LGビーム)を用いる.試作装置では,空間光変調器に表示した位相ホログラムにより,LGビームの位置制御,マルチビーム化,気泡と細胞の同時捕捉など自由度の高い制御を実現した.○観察チャンバ部 本研究では,心筋細胞と血管内皮細胞を用いて機械的刺激に対する反応を検討する.そのため,超音波で機械刺激を加えつつ光顕観察が可能な観察チャンバを開発した.特に心筋細胞では,機械的刺激と電気的刺激が心拍動に与える影響の違いを検討することを目的の一つとしており,観察チャンバ内の細胞に電気刺激を加える機能を追加した.また,血管内皮細胞の変化は,数日の単位で生じると考えられるので,この期間にわたってチャンバ内の培養環境を保持する技術を検討した.現在,1日程度の連続観察が実現できている.○超音波照射部 細胞により一様な刺激を与えることを目的に,平面型振動子を試作した.振動子の中央には照明光通過用の孔を設け,超音波照射中にも細胞の変化の連続観察ができるよう設計した.機械的刺激と可視化範囲を両立させる最適設計,必要な刺激力を得る上で最適な超音波周波数や微小気泡の大きさ等に関する検討は,今後の課題である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
○光ピンセット部 今回の検討では,空間光変調素子に表示したホログラムを用いて光ピンセットビームを発生し,自由度の高い気泡や細胞の捕捉を実現した.反面,光ピンセットの捕捉力は十分ではなく,核近傍など細胞が盛り上がった部位では,気泡の位置を安定に保つことが難しかった.また音響放射力により気泡位置が変化する様子も見られた.これらの点については追加検討が必要である.○観察チャンバ部 開発した観察チャンバは,心筋細胞の拍動観察の実験ではほぼ満足できる性能を実現できた.しかし,長期間の連続観察については,1日程度の観察しか実現できて居いない.長期間に渡るゆっくりとした変化を観察するには,チャンバ内の培養環境の維持の方法を検討する必要がある.○超音波照射部 平面型超音波振動子を試作・評価したが,超音波刺激をしながらの光顕観察は満足できる結果ではなかった.振動子形状,発生する超音波の強度,使用する微小気泡の大きさ等について最適化を行っていく必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
○2種類の細胞刺激実験による提案手法の有用性の確認 上述した3つの要素技術に関する残件について追加検討を行い,刺激装置を完成させる.そのうえで,心筋細胞および血管内皮細胞を対象に局所刺激実験を行ない,刺激に対する細胞の変化を種々の手法で観察することにより,細胞力覚と単一細胞レベルでのメカノトランスダクション研究における提案手法の有用性を示す.○心筋細胞の拍動に関する検討 以前我々は,自律拍動する培養心筋細胞を用いて,機械的刺激により,期外収縮を誘起できることを報告した.そこで本研究では,自律拍動をしていない培養心筋に持続的な機械刺激を加えることにより,拍動を誘導することの可能性について検討する.また,電気的刺激により誘導される拍動との比較を行い,機械的刺激と電気的刺激が作用を生じる機序の違いについて検討する.○血管内皮細胞の配向に関する検討 血管内皮細胞は,拍動流が生じる機械刺激によって自身の配向を変化させることが知られている.そこで,血管内皮細胞に本刺激装置を用いて定常的な機械的刺激を加え,内皮細胞に生じる変化を種々の蛍光染料を用いて可視化し,刺激の種類や場所による細胞の応答・変化を調べる.長期間にわたる細胞の変化をタイムラプス観察を通じて明らかにする.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
約100万円の研究費が24年度に持ち越される.これは,下記2項目に関する検討が遅れたために生じたものであり,24年度に検討を行うために用いる.○気泡と細胞の接触力の向上 今回の装置では,空間光変調素子を用い,自由度の高い気泡の位置制御を実現した.しかし,捕捉力が不十分であり任意の位置に気泡を固定できない問題があった.これを解消するため2つの点について検討する.1つは,細胞表面に接着するよう表面を化学就職した気泡の開発である.もう1つは,気泡の上下方向の位置制御能の向上である.現在の光ピンセットでは,光の放射力により上下方向の現在の光ピンセットではの不安定な位置に置かれた気泡は,超音波照射などにによる位置の変化が起きるので,この点については追加検討が必要である.○超音波照射部 平面型超音波振動子を試作したが,その実用性の評価と最適設計の検討は十分に行うことができなかった.24年度,振動子や照明孔の形状,発生する超音波の波形や強度,使用する微小気泡の種類,大きさ等について最適化を行なう.
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Research Products
(9 results)