2011 Fiscal Year Research-status Report
コラーゲン誘導体を用いた全身転移ガン細胞標的核酸医薬の開発
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23650255
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小田 和司 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (30293400)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 核酸医薬 / ナノバイオロジー / ナノメディスン / 全身転移ガン細胞 / ドラッグデリバリー / テーラーメイド医療 / コラーゲン誘導体 / siRNA |
Research Abstract |
平成23年度は新田ゼラチン社の協力を得て、精製されたコラーゲン試料を出発物質とし、荷電が変化するよう酸処理したりさらにカチオン化修飾したコラーゲンを調製し、さらにこれをD29タイプ酵素、P20タイプ酵素で限定分解した試料を各数種調製、精製した試料を得た。これらを元に細胞の培養条件や添加物質(プルラン、デキストラン等)を少しずつ変えながら実験を繰り返し、最適条件を探った。その結果、以前の実験条件よりおよそ10%程度形質転換効率が上昇した。しかし、まだ画像解析装置を用いて自動的に形質転換効率を測定可能なレベルにまで形質転換による発光効率を上昇させることに成功していない。アテロコラーゲンを用いた形質転換の原理は、アテロコラーゲンが+チャージを持っているためにエンドサイトシスが起きるため、といわれている。エンドサイトシスは、極性を持った高分子が細胞表面の受容体に結合するとクラスリンに覆われた細胞表面にくぼみができて最終的に細胞内に取り込まれるといわれている。また、コラーゲン自身に核酸と結合する能力が元々あるため、コラーゲンは形質転換に向いた生体材料であると考えられている。しかし、現在のところ画像解析装置による自動計測が可能なレベルにまで実験条件の検索が進んでおらず、当初の研究計画の想定を下回る段階にしか進んでいない。過去の発表論文では核酸と結合する物質(本研究におけるコラーゲン誘導体に相当する)と細胞膜に結合しやすい物質を結合させることにより効率よく核酸を導入することに成功しているが、コラーゲン誘導体と細胞膜を結合させやすくする補助添加物質の検索(プルラン、デキストラン等)において現在のところ、実用的に有効な物質を見出せていない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究を成功させるための最も重要なステップである『形質転換効率の画像解析装置による自動計測』にいまだに成功しておらず、現在のところ形質転換効率の計測は顕微鏡下で目視で形質転換細胞を計数しているために非常に非能率なことが原因である。この問題を早急に解消できるレベルにまで形質転換効率を上げる実験条件とコラーゲン試料調製法の確立が急務となる。これが解決しないうちに次のステップの実験をしても成果を挙げることの困難が予想される。そのためむやみに次の段階である『siRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索』および、『経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索』の実験には進まなかった。なお、形質転換効率が十分上がって自動計測が可能になった状態になったとき速やかにこれらの保留された実験が遂行できるよう、現在、新田ゼラチン社にsiRNAの導入効率のよくなると期待されるコラーゲン誘導体試料、および経口投与に適すると期待されるコラーゲン誘導体試料の調製を依頼してある。
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Strategy for Future Research Activity |
おそらくほんのささいな実験条件の改良で急進展する可能性がある。基礎的な培養条件や添加物を少し変えるだけで自動計測可能なレベルに達すると思われる。それは過去に発表されている論文の内容を追試する実験を行っても発表されている内容よりも形質転換効率が低いため何か基礎的な実験条件が抜け落ちていることが考えられる。形質転換効率の問題を解決した後、平成23年度に実施予定でできなかったsiRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索と経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索を、当初平成24年度に実施予定だった『ドラッグデリバリーシステムに適合した素材加工技術の開発』に加えて行う。また、これも当初平成24年度に実施予定だったさまざまな細胞種に開発した試料を適用し、この手法の有効性を確かめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を成功させるための最も重要なステップである『形質転換効率の画像解析装置による自動計測』にいまだに成功していないために当初の計画では平成23年度に遂行完了予定であった『siRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索』および、『経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索』に振り分ける予算が未執行のまま残っているためそれを平成24年度に執行、実施する。さらに当初実施予定であった『ドラッグデリバリーシステムに適合した素材加工技術の開発』および、『さまざまな細胞種への核酸導入効率の調査』の実験をあわせて行い、当初計画の完遂を目指す。『siRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索』ではコラーゲン誘導体試料の調製と分子生物学実験試薬および器具の購入に12万円、『経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索』ではコラーゲン誘導体試料の調製と分子生物学実験試薬および器具の購入に12万円、『ドラッグデリバリーシステムに適合した素材加工技術の開発』では選定したコラーゲン誘導体試料の加工およびその分子生物学的試験に伴う費用に20万円、『さまざまな細胞種への核酸導入効率の調査』ではその分子生物学的試験に伴う費用に19万円、さらに12月に福岡で開催される分子生物学会発表のための旅費として11万円を配分する。
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