2012 Fiscal Year Research-status Report
コラーゲン誘導体を用いた全身転移ガン細胞標的核酸医薬の開発
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23650255
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小田 和司 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 助教 (30293400)
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Keywords | 核酸医薬 / ナノバイオロジー / ナノメディスン / 全身転移ガン / ドラッグデリバリー / テーラーメイド医療 / コラーゲン誘導体 / siRNA |
Research Abstract |
コラーゲンやその誘導体を用いて形質転換を行う仕組みは、もともと正電荷を持ったコラーゲン分子が核酸と結合しやすく、かつ正電荷を持っていることそのものが細胞内への取り込み効率を上げるためにさまざまな細胞の形質転換効率を上昇させやすいと考えられている。実際、もともとあまり正電荷をもっていないGFPを遺伝子工学的に改変して正電荷を持たせた改良GFPを用いてもGFPたんぱく質が効率よく細胞内に取り込まれることからもそれがわかる。安価に入手可能なコラーゲンを用いて新田ゼラチン社の協力を得て、正に荷電が変化するよう酸処理したりさらにカチオン化修飾したコラーゲンを調製した試料を用いてHEK細胞の形質転換効率の変化を調べた。各種コラーゲン試料単独では十分な形質転換効率の上昇は得られず、添加物質を少しずつ変えながら実験を繰り返し、最適条件を探った。およそ10%程度形質転換効率が上昇したが、まだ画像解析装置を用いて自動的に形質転換効率を測定可能なレベルにまで形質転換による発光効率を上昇させることに成功していない。 最近、疎水性面と親水性面の両方をもつ26アミノ酸残基からなるEndo-Porterと呼ばれる物質が開発され、細胞内への物質の取り込みに大きな効果を挙げることが報告された。コラーゲン誘導体を用いた形質転換がうまくいかない理由として核酸とはよく結合するが核酸との複合体と細胞表面の結合が十分でない可能性が考えられる。現在のところ画像解析装置による自動計測が可能なレベルにまで実験条件の検索が進んでおらず、当初の研究計画の想定を下回る段階にしか進んでいない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究を成功させるための最も重要なステップである『形質転換効率の画像解析装置による自動計測』にいまだに成功しておらず、形質転換効率の計測は顕微鏡下で目視で形質転換細胞を計数しているために非常に非能率な状況がまだ解決していないことが原因である。この問題を早急に解消できるレベルにまで形質転換効率を上げる実験条件の確立が急務となる。これが解決しないうちに次のステップの実験をしても成果を挙げることの困難が予想される。そのうえで次の段階である『siRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索』および、『経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索』の実験に進める。
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Strategy for Future Research Activity |
Endo-Porterを添加した条件下で形質転換効率を調べ、それで十分な蛍光レベルまで上昇した場合は当初の予定通りsiRNAの導入効率のよいコラーゲン試料の検索を行うが、もしこれでも十分な蛍光レベルまで発光しない場合は目視による計数で成績の比較的よいコラーゲン試料を選び、それをもとに経口投与でマウス生体内で核酸導入が起きるか実験を試みる。非能率な方法のため実用的な結果が得られるかわからないが当初の研究目的の重要目標なので挑戦する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究を成功させるための最も重要なステップである『形質転換効率の画像解析装置による自動計測』にいまだに成功していないために当初の計画では平成23年度に遂行完了予定であった『siRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索』および、『経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索』に振り分ける予算が未執行のまま残っているためそれを平成24年度に執行、実施する。さらに当初実施予定であった『ドラッグデリバリーシステムに適合した素材加工技術の開発』および、『さまざまな細胞種への核酸導入効率の調査』の実験をあわせて行い、当初計画の完遂を目指す。 『siRNAの導入効率のよいコラーゲン誘導体試料の検索』ではコラーゲン誘導体試料の調製と分子生物学実験試薬および器具の購入に15万円、『経口投与に適したコラーゲン誘導体試料の検索』ではコラーゲン誘導体試料の調製と分子生物学実験試薬および器具の購入に12万円、『ドラッグデリバリーシステムに適合した素材加工技術の開発』では選定したコラーゲン誘導体試料の加工およびその分子生物学的試験に伴う費用に12万円、『さまざまな細胞種への核酸導入効率の調査』ではその分子生物学的試験に伴う費用に12万円、さらに12月に神戸で開催される分子生物学会発表のための旅費として6万円を配分する。
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