2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞間相互作用の研究また組織再生に用いる細胞マニュピュレイション方法
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23650257
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岩田 博夫 京都大学, 再生医科学研究所, 教授 (30160120)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 単鎖DNA / 接着剤 / 細胞接着 / 細胞凝集体 / リン脂質 / Pottsモデル |
Research Abstract |
ポリエチレングリコールと単鎖DNA(20残基)をタンデムに結合した ((ssDNA)20-PEG-lipid複合体を合成した。(ssDNA)20-PEG-lipidで 処理した細胞とその相補鎖 (ssDNA’)20が固定されたガラス基板に相補対形成を利用して細胞を固定した。その細胞の形態、移動速度、増殖速度などの解析を行っている。また、複数種の細胞を混ぜて細胞の凝集塊を作り、その凝集塊中での細胞の配置について検討を加えてきた。細胞の組み合わせは、膵島細胞とセルトリ細胞、間葉系幹細胞、血管内皮細胞、繊維芽細胞、または、制御性T細胞との組み合わせである。凝集塊の作成方法は、ハンギングドロップ法とリン脂質、(ssDNA)20-PEG-lipidを細胞間の接着剤として用いた強制凝集法で行っている。ハンギングドロップ法ではセルトリ細胞がコアで膵島細胞が皮、間葉系幹細胞と血管内皮細胞ではそれぞれの細胞が個々の凝集体を作るがそれぞれの細胞集合はランダムに位置していた。また、細胞の再配置は予想外に早く細胞混合後24時間の時点でそれぞれの細胞の位置取りが決まっていた。繊維芽細胞と制御性T細胞については現在検討中である。膵島細胞の凝集体を作りこれにセルトリ細胞を(ssDNA)20-PEG-lipid用いて貼り付けた場合は、セルトリ細胞が膵島細胞凝集体の中に侵入していった。それぞれの細胞の配置のみならず、それぞれの細胞機能についても検討を行っている。現在のところ他の細胞の組み合わせについては研究が進行中である。数理モデルは、J. Glazierにより開発されたPottsモデルを用いたCompucell3Dを用いて解析している。シミュレーション時に用いる細胞間接着のパラメータと実験的に得られる細胞接着のパラメータの対応付けを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予想どうり結果が得られおおむね順調に進んでいる。一点意外な結果は、種々の細胞を(ssDNA)20-PEG-lipidで処理したところ、ミエローマ細胞は(ssDNA)20-PEG-lipidで表面処理を行うことができなかった。現在、細胞膜の脂質二重膜の流動性と(ssDNA)20-PEG-lipidで表面処理の可能性との相関を調べている。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞間相互作用を観察できる系の構築:インクジェットプリンター用いて末端にチオール基またはカルボキシルキを有するオリゴDNAをプリントする。このとき用いる基盤は金薄膜を有するガラス、または、シランカプリング剤で処理しアミノ基を導入したガラスである。表面の所定の位置にオリゴDNAを固定する。その上に基板上のDNAとハイブリダイゼーションすることが出来る(ssDNA)20-PEG-lipid-細胞を播種して細胞を所定の位置に固定する。この方法を用いて、多種の細胞がES/iPS細胞を分化誘導することをハイスループトで観察する系を作成する。マイクロ流路を作成し、その流路内の所定の位置に細胞を接着して薬物評価系のモデル実験も行う。学内のMEMS研究者との人脈をフルに活用して共同開発を行う。2.複数の細胞からなる組織体の再生と再生医療への応用を発展する。(1)複数の組織からなる3次元組織の構築を行。特にiPS細胞から分化誘導した神経幹細胞の分化、さらに、分化した神経細胞やグリア細胞の細胞集合体内のそれぞれの細胞の配置を詳細に解析するとともに、その配置を制御する方法の開発を行う。(2)再構築した細胞凝集体を体内に移植したときの、細胞再配置の検討を行う。これらの得られた結果をCompucell3Dを用いて解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究に用いる機器は総て研究室また研究所で有する機器で行うことが出来る。オリゴDNA、PEG脂質、牛胎児血清など高額な試薬が必要なので消耗品費の金額が大きくなっている。今ならこのテーマで多数の論文をかくことが可能である。最終年度であるので目標とした5報分の英文校正費に25万円計上した。海外渡航費を確保が出来ないため、国際学会へは参加しない。
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