2011 Fiscal Year Research-status Report
自己集合性ペプチドゲルを用いた3次元培養ストレッチシステムの開発
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23650264
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
成瀬 恵治 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40252233)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 再生医療 / 機械刺激 / スキャフォールド / 自己集合性ペプチド |
Research Abstract |
これまで再生医療では細胞を増殖・分化させる手段として、日常的に生体内で発生している機械刺激を応用するという発想はなかった。そこで、本研究では独自開発した自己集合性ペプチドゲルをスキャフォールドとした3次元培養ストレッチシステムを作製し、ゲルへの伸展刺激を最適化することで、再生組織をより生体に近づけることができるかどうかを明らかにすることを目的とする。 平成23年度の研究では従来型の培養器を改良し、発泡PDMSシートを垂直に2枚ならべてその間に一定容量の自己集合性ペプチドゲルを挟む構造とした。これにより、シート間でのゲルの保持が確実となり、培養器の伸展に伴ってゲル内部にある細胞が伸展する様子が観察された。さらに、伸展刺激によるゲルの内部細胞のERKのリン酸化の亢進が確認され、3次元培養ストレッチシステムが機能することが証明された。また、発砲PDMSシートの作製は手作業のための大きさ・形にばらつきがあり、これを鋳型を用いて作成したPDMSシート(縦x横x高さ=20x1x2mm、側面にφ=1.2mmの穴x8)に切り替えた。その結果、さらに安定して実験が行えるようになった。 上記システムを用いて、自己集合性ペプチドゲル内で培養したマウス筋芽細胞に周期的な伸展刺激(プレ培養8日間、伸展パターン:伸展率0%で5分間―伸展率10%で5分間の繰り返し)を加えると細胞増殖率が向上した。これにより、機械刺激のみで細胞増殖を促進させられることが証明された。ゲル内部の筋芽細胞は培地の血清量を減らすことでmyotube(筋管)へ分化することが分かっており、今後、持続的な伸展刺激を加えた場合の影響を確認する。また、筋芽細胞へのGFP発現遺伝子導入法について、BioTechniques 35:936-940, 2003を参考としたリポフェクション法を行うことを決定し、現在、作業準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究にて作製した3次元培養ストレッチシステムを用いることで、スキャフォールド内の3次元培養細胞への伸展刺激が可能であることが証明され、それらの結果については論文発表するに至った。(Biomaterials 33(4): 1044-1051, 2012)。ストレッチシステムを完成させ、研究初年度に研究成果を論文発表できた点については計画を大きく上回る結果と言える。またさらに+αとして、培養器内に装着する発泡PDMSシートの大きさ・形のばらつきを改善するため、鋳型を用いたPDMSシートに変更した。これにより、ストレッチシステムの完成度を計画当初よりも向上させることができた。さらに、同システムを用いた伸展刺激によって、増殖因子を用いずとも細胞増殖を促進させることが可能であるという実験結果を得ることができた。これにより、研究の目的である「伸展刺激を最適化することで、再生組織をより生体に近づけることができるかどうかの見極め」について大きく前進したと言える。また、一連の実験活動によって伸展刺激バターンやプレ培養期間の最適化についてのノウハウが蓄積できており、今後の分化誘導実験についても十分に期待ができる。現在準備を進めている筋芽細胞へのGFP発現遺伝子の導入法は、一般的なリポフェクション法と比較して高い導入効率が得られることが報告されており、同手法を用いることで遺伝子導入株の作製時間短縮が期待できる。これにより、24年度の研究計画実施へのスムーズな移行が可能となると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
周期的な伸展刺激による細胞増殖率向上について、データを蓄積させ、さらに伸展パターンの変化について検討する。また、刺激後の増殖/分化マーカー(候補:pERK・pP38/pAKT・pMEF2C)の増加の有無についてウエスタンブロットにて確認する。また、伸展刺激がECM成分の分泌に及ぼす影響を確認するため、ゲルの凍結切片を作製し、I型コラーゲンの免疫染色を実施する。 持続的な伸展刺激による筋芽細胞の分化について、通常培養8日後に24-72時間程度の伸展(伸展率10%)を行い、上記と同じく増殖/分化マーカー(候補:pERK・pP38/pAKT・pMEF2C)の増加をウエスタンブロットにて確認する。さらにGFP発現遺伝子の導入株について、同様の分化誘導を行い、myyotubeの形成の経時変化を確認する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
細胞培養関連試薬・器具、自己集合性ペプチドゲル、遺伝子導入関連試薬、培養器作製材料、免疫染色用の抗体・試薬を購入する予定である。
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Research Products
(2 results)