2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650270
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷下 一夫 慶應義塾大学, 理工学部, 名誉教授 (10101776)
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Keywords | バイオメカニクス / 再狭窄 / 動脈病変 / 血流 / 応力分布 |
Research Abstract |
冠状動脈の狭窄をステントにより拡大して、血流を改善する血管内治療が広く行われているが、半年以内に再狭窄が生じるので、再狭窄の回避が必須となっている。本研究では、再狭窄のバイオメカニカルなプロセスを明らかにすることにより、再狭窄を回避するステントの実現を目指す。再狭窄の原因として、ステント拡張時にステントによる血管壁の応力負荷による血管壁の障害および血管壁の壁面せん断応力が誘発する内膜新生が考えられる。本研究では、これらの力学的因子が相互に関係して再狭窄が生じると考え、両者の影響を統合的に捉えて再狭窄の力学的な原因を明らかにすることが目的である。再狭窄との関連を効果的に調べるために、臨床現場で使用されて臨床成績が明らかになっているステントに着目して、それらの形状や材料の性質を考慮して、血管内の応力分布と血流によるせん断応力の分布を定量的に評価し、ステントデザインと再狭窄との関連について検討を行った。解析の対象としたステントは、臨床現場で使用されている4種類のステントモデルを採用した。その結果、ステント拡張によってストラット付近では、応力集中と低せん断応力領域が見いだされた。再狭窄はステントストラット付近において低せん断応力による内膜増殖と損傷部における血小板の付着によって再狭窄の初期段階が生じ、数ヶ月して半径方向の応力による平滑筋細胞の増殖、収縮性リモデリングの影響によって後期の再狭窄が生じる可能性がある。これらの成果を基に、平成24年度では、病変血管における血流解析を臨床現場で活用出来るようにするため、格子状のメッシュを対象とするボクセル法の適用の妥当性を検討した。これらの結果、再狭窄と関連する因子は力学的な要因が支配的で、血管や血流のバイオメカニクスが臨床応用の際に重要となる事が明らかになった。
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