2011 Fiscal Year Research-status Report
生体内崩壊性材料を利用した弾性率漸減型インテリジェント骨固定材の開発
Project/Area Number |
23650283
|
Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
野村 直之 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (90332519)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
土居 壽 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (30251549)
堤 祐介 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (60447498)
蘇 亜拉図 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 特任助教 (80611532)
中本 貴之 大阪府立産業技術総合研究所, その他部局等, 研究員 (40393300)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 弾性率漸減材料 / 生体内崩壊材料 / 骨固定材 / 生体材料 / バイオマテリアル |
Research Abstract |
本研究では、骨折固定の初期に高い弾性率を保持し、固定時間の増加とともに弾性率が漸減して骨と同等の弾性率へと変化する「弾性率漸減型インテリジェント骨固定材」を開発し、弾性率が漸減可能であるかを確認する。その上で得られた弾性率や弾性率減少速度を試料作製プロセスにフィードバックし、弾性率減少速度の制御を試みる。平成23年度では、多くの気孔を有し人の皮質骨と同等の弾性率を有する金属多孔体を、レーザー積層造形装置により作製することを試みた。 7×7×5mm3の直方体の中に直径1mm の円柱形状の気孔を1mm間隔に3軸方向に直交するように配置し、気孔率31.0%の3次元モデルを作成した。水アトマイズ法により作製したCo-29Cr-6Moの粉末をレーザー積層造形装置に使用した。レーザー積層造形の条件は、出力200W、スキャン間隔0.2mm、積層厚さ0.05mmとし、スキャン速度は50から150mm/sとした。造形体の気孔率は積層造形体の体積および重さから算出した。 各スキャン速度で作製した多孔質コバルト合金の気孔率はそれぞれ47.0から55.4%であり、モデルの気孔率より高い値を示した。これは造形体内部のチャンネルの寸法変化や、チャンネル以外の造形部における気孔の存在に起因する。積層方向に対して平行な方向に対しては、気孔は円柱形状を保ったが、垂直な方向では円柱形状とはならなかった。粉末積層方向に垂直な断面から得られたX線回折測定の結果から、いずれの条件においても相(fcc)の(200)からのピーク強度が著しく高いことから、粉末積層方向に対して相の[100]方位が配向しているものと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体材料として使用実績があり、かつ高い弾性率を示すコバルトクロム合金を原料とし、レーザー積層造形により金属多孔体の作製を行った。得られる気孔率がモデルよりも大きくなる傾向があることや、積層パラメータにより変化することが明らかとなった。この結果は積層造形を行ったことで明らかになった傾向であり、今後繰り返し積層造形実験を行うことでモデルや積層パラメータの最適化ができるものと考える。また、積層方向に対して[100]方位が配向することが明らかとなった。この結果は本合金の積層造形体は、結晶方位制御が可能であることを示しており、結晶方位を利用した弾性率低減も可能であることを示唆する新たな結果を見出した。 平成23年度の研究予定では、金属多孔体の作製においては予定通り研究を進めており、加えて新たな実験結果を見出したが、セラミックスの複合化により生体内崩壊性材料の作製についても行う予定であったため、全体では、やや遅れているとの評価とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に引き続きレーザー積層造形による多孔体作製を行う。昨年度得られた実験結果を基に、皮質骨と同等の弾性率を高気孔率含有コバルトクロム多孔体の作製を目指す。円柱の直径を変化させることにより気孔率の増大と弾性率の低減を行う。気孔率の測定には、見掛け密度による測定と、X線CTスキャナを用いた測定を行う。特に後者は気孔の形状測定も可能となる。弾性率測定には、自由共振法による評価に加え、3点曲げ試験による測定も行う。 また、平成23年度に実験予定であった生体内崩壊材料の作製と弾性率変化について調べる。α-TCP、β-TCP、HApの各粉末試料を準備し、それぞれをプレス機により直径10 mm、高さ8 mmのタブレット状に成型し、焼結を行う。焼結温度は773 Kから1473 K、保持時間7.2 ksとする。これらの試料をpH 5に調節したHanks溶液中に、それぞれ21日間浸漬する。pHを5とする理由は、骨折した際に材料が生体内に埋入させた直後には炎症反応が起こり、pHが約5.2まで低下するためである。pH 5に調節したHanks溶液の交換は毎日行うこととする。浸漬前後の各試料に対して、自由共振法を用いた弾性率測定装置を用いて測定する。Hanks溶液浸漬により、各焼結体の弾性率の経時変化を評価できる。α-TCP、β-TCP、HApを種々の量比で混合し、同様の手順で焼結する。この焼結体の弾性率の経時変化を同様の手法により調べる。 21日程度で過重負担機能がなくなるα-TCP、β-TCP、HApの混合比を選択し、そのスラリーを積層造形法により作製した金属多孔体に導入し複合化する。冷間等方圧プレス(CIP)により、充填密度を高める。高密度に充填された金属多孔体を773 Kから1473 Kの範囲で焼結することにより、金属多孔体/TCP複合材料を得る。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として、レーザー積層造形に必要なコバルトクロム合金粉末を購入する。レーザー積層造形には多量の合金粉末が必要なため、次年度使用額を用いて購入する。積層造形の際に土台として必要な金属プレートや研磨材等の消耗品を購入する。また、各種α-TCP、β-TCP、HAp粉末を購入する。これらの粉末を焼結するためのカーボンモールドを準備する。これらの消耗品にも次年度使用額を配分する。旅費には、レーザー積層造形のための装置使用料や交通費および宿泊費を計上している。また、研究成果を学会にて報告するための旅費を計上している。謝金には、研究成果を論文投稿するための英文校正の費用を計上している。その他には、組織観察に使用する電子顕微鏡使用料を計上している。
|
Research Products
(2 results)