2011 Fiscal Year Research-status Report
人工ウイルス型ナノキャリアの開発と疾患に応答した薬物放出機能の構築
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23650288
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
村田 正治 九州大学, 先端融合医療レドックスナビ研究拠点, 准教授 (30304744)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | DDS / ナノ材料 / タンパク質 |
Research Abstract |
腫瘍化に伴う遺伝子レベル、あるいは分子レベルでの変化が解き明かされることによって新しい治療戦略が開発されてきた。特にがん遺伝子産物に関する知見や細胞内シグナル、血管新生、そして転移機構などに関する近年の著しい進展は、従来にないコンセプトに基づく化学的あるいは生物学的に治療法を可能にしている。しかしながら、これら新規薬物の治療効果を最大限に引き出すためには、同時に病変部位への薬物輸送システム(ドラッグデリバリーシステム, DDS)の開発が必要不可欠である。標的細胞への的確な薬物輸送は、副作用の低減と投与量の減少を通じてこれまでの薬物治療に大きな改善をもたらすであろう。 そこで本研究ではタンパク質ベースのナノDDSキャリアの設計と発現を行った。このタンパク質は自己組織化により24量体となり、直径約12nmの球状構造体を構成する。われわれはこのタンパク質を天然のナノカプセルとして捉え、これを遺伝子工学的に改変することで、肝細胞のターゲティングを行った。ヒトB型肝炎ウイルス(HBV)由来のPreS1ペプチドは肝細胞表面のレセプターと結合し、肝細胞への侵入の重要な基点となっている。本年度はこのPreS1ペプチドをナノカプセル表面に呈示した肝特異的ナノカプセルを設計した。PCRにより、PreS領域の21-47aaのアミノ酸配列をカプセルのC末端に遺伝子レベルで組み込み、大腸菌で発現させたところ、このPreS1ナノカプセルはその大部分が可溶性タンパク質として発現した。クロマトグラフィーで精製し、その物性を動的光散乱法(DLS)評価したところ、野生型ナノカプセルの粒径が12.7 nmであったのに対し、PreS1ナノカプセルのそれは14.7nmであった。またこれらのナノカプセルの細胞特性を評価したところ、PreS1ナノカプセルはHepG2やHuh-7等の肝由来細胞に高い親和性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
薬物輸送のためのキャリア開発の第一段階である標的化を実施し、ほぼ当初の目標通りの成果が得られた。カプセル内部への抗癌剤の内包条件、細胞内においてカプセルを崩壊させる仕組みについても基礎検討を実施している。さらに癌部周辺での低酸素状態に応答する仕組みや、ユビキチンシグナルに対応した薬物放出システムを計画中であり、当初の研究期間内に達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
現在はin vitroでの評価にとどまっているが、今後、PreS1ペプチドをより長鎖のものへ変更し、さらにN末端のミリストイル化等を実施することでより親和性の高いナノカプセルを設計・発現する予定である。このミリストイル化については、酵母に由来するN-ミリストイルトランスフェラーゼ(NMT)を新たにクローニングし、大腸菌を使ったT7発現システムにおいて、ナノカプセルとの共発現を実施する予定である。また細胞内での薬物放出機序についても、研究を推進する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定通り、消耗品の購入と成果発表の経費として使用する予定である。上記の研究計画を円滑に実施するため、N-ミリストイルトランスフェラーゼ遺伝子の購入や遺伝子クローニング、発現、精製に関係する消耗品(各種酵素、培地、イオン交換カラム、各種緩衝剤、ディスポーザブル器具等)の購入に充当する計画である。また研究成果の発表および最新の研究情報収集のため学会への参加も予定している。
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Research Products
(2 results)