2011 Fiscal Year Research-status Report
細胞内シグナル伝達変異細胞を利用したリハビリテーション効果発現機序の解析
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23650341
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
加納 良男 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (70116200)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 顕治 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (40278974)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | p38MAPK USA / JNK USA / Akt USA / P13K USA / ERK USA / Aging USA / Anti aging USA |
Research Abstract |
平成23年度は、既に得られている3種類の細胞内シグナル伝達変異細胞を用いて、神経再生とリハビリテーション効率を向上させるための実験を行い多くの成果が得られた。3種類の細胞は、1.PC12m3, 2.PC12m11, 3. PC12m3-S細胞である。1.のPC12m3細胞では、リハビリテーション効率を高める物理刺激や薬剤の効果について詳細な分析を行った。物理刺激では主として温熱療法に用いられる温熱のPC12m3細胞に与える影響について検討し、その効果がp38キナーゼを介して神経突起の促進として現れ、p38キナーゼの阻害剤であるSB20358はその効果を大きく抑制することが解った。さらに過度な温熱刺激はJNK酵素を活性化して細胞死に働くことが判明した。次に薬剤としては主としてアロマテラピーに用いられるリモネンについて検討した。このリモネンがPC12m3細胞の神経活性に働くかどうかについて詳細に分析を行い、これもp38キナーゼが働いて神経突起伸長の促進作用があることが判明した。2.のPC12m11細胞では、脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上のための基礎実験を行った。PC12m11細胞はアセチルコリンに高感受性があるが、アセチルコリンは神経と筋細胞との接続に働く。今回はPC12m11細胞にアセチルコリンを作用させる時どの細胞内シグナル伝達経路に働く酵素が働いて神経が活性化するかについて検討したところERK酵素が働いていることが判明した。3.のPC12m3-S細胞では、神経細胞の長期生存に働く要因について検討した。今回我々は、神経細胞の長期生存にどのような細胞内シグナル伝達酵素が関与しているかについて調べたところ研究計画時に予想していたp38キナーゼではなく新たにAkt酵素が働いていることが判明し今のところその詳細な分析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の達成度について、3種類の変異細胞を用いた研究成果の自己点検を行ったところ、1.のPC12m3細胞を用いたリハビリテーション効率を高める温熱刺激や薬剤の開発は、90%以上の達成度があり、2.のPC12m11細胞を用いた脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上の検討は、約70%の達成度があり、3.のPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存に働く要因の検討では、約60%の達成度があると評価した。その理由について説明します。1.PC12m3細胞を用いた研究;この研究では、p38キナーゼの活性の高い細胞では温熱効果が高いが、低い細胞では温熱効果が弱く細胞の害作用があるJNK酵素が活性化することが判明した。この結果は温熱療法を行う際には、温熱に対する個人差があることの重要性をを示した。次に薬剤としてアロマテラピーに用いられるリモネンについてはその成果をActa Med. Okayama, 66, 111-118 (2012)にNeurite Outgrowth of PC12 Mutant Cells Induced by Orange Oil and d-Limonene via the p38 MAPK Pathwayとして発表した。2.PC12m11細胞を用いた研究;この研究では、PC12m11細胞がアセチルコリンによってERK酵素が働いていることが判明したが、PC12m11細胞と筋細胞との接続における詳細な分析する必要があるため、達成度はまだ70%と評価した。3.PC12m3-S細胞を用いた研究;神経細胞は長期生存できるメカニズムを備えている。PC12m3-S細胞の長期生存に働く要因についてAkt酵素が働いていることが判明しがまだ詳細な分析を行う必要があるため、達成度は60%と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の研究では、3種類の細胞内シグナル伝達変異細胞を用いて、神経再生とリハビリテーション効率を向上させるための実験を行った。その結果、1.のPC12m3細胞を用いたリハビリテーション効果発現機序の解明と、その効率を高める物理刺激や薬剤の開発においてはほぼ当初の目的を達成することができた。2.のPC12m11細胞を用いた脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上の研究は、アセチルコリンの反応実験に多くの時間を費やしても完成させることができず、24年度に研究費を繰り越すことになった。3.のPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存のメカニズムと長期生存に働く要因の検討では、当初の予想とは異なる、長期生存にAkt酵素が非常に重要な働きをしていることが判明し、この研究においても24年度に研究費を繰り越すことになりました。 今後は、PC12m11細胞を用いた研究では、アセチルコリンレセプターをもっているPC12m11細胞にアセチルコリンを作用させると神経と筋細胞との接続に働くために細胞内シグナル伝達経路にERK経路の他にp38やJNK経路はどのように関わっているかについて検討する。さらにPC12m11細胞と筋細胞における神経筋接続は、アセチルコリンを投与するとどのような現象が起こるかパッチクランプ法等によって解析を行なう。またPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存に働く要因の検討では、物理刺激は電気刺激、音波、バイブレーション、温熱刺激等の影響についても調べる。またPC12m3-S細胞を神経を保護する作用があるグリア細胞と混合培養した時とのような変化がおきるかについても調べる。さらにPC12m3-S細胞が長寿になった原因はAkt経路の遺伝子の突然変異があることが予測できるのでAktを支配しているPI3K遺伝子の分析を試みる
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究では、2.のPC12m11細胞を用いた脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上の研究と、3.のPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存のメカニズムと長期生存に働く要因の研究では、当初の予想とは異なり、24年度に研究費を繰り越すことになりました。最初の研究計画では、突然変異細胞の維持と変異形質の検査のための大量の培地や血清、ピペット、シャーレ、フラスコ等各種培養消耗品、それに神経成長因子や酵素の阻害剤等の消耗品も多数必要としておりました。さらに細胞内シグナル伝達系に働く各種酵素の検出に抗体などを予定しておりました。今回は平成23年度の研究で出来なかったため繰り越した研究費は、PC12m11細胞を用いた研究では、神経と筋細胞との接続に働く細胞内シグナル伝達経路のERK経路の他に今回は、p38やJNK経路はどのように関わっているかについて検討するため新たにp38やJNK経路に関わるMKK3, MKK6、SEK1等の分析に必要な酵素と抗体を使用します。また。またPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存に働く要因の検討では、PC12m3-S細胞が長寿になった原因は新たに、Akt経路の遺伝子の突然変異が原因と考えられ、Aktを支配しているPI3K遺伝子の塩基配列や遺伝子発現を分析するための酵素などに繰り越した研究費を使用します。
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Research Products
(3 results)