2012 Fiscal Year Research-status Report
細胞内シグナル伝達変異細胞を利用したリハビリテーション効果発現機序の解析
Project/Area Number |
23650341
|
Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
加納 良男 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (70116200)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河村 顕治 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (40278974)
|
Keywords | p38MAPK / ERK / Akt / PI3K / Fibroblast / Aging / Anti aging / Mouse |
Research Abstract |
平成23年度と平成24年度は、既に得られている3種類の細胞内シグナル伝達変異細胞を用いて多くの成果が得られた。3種類の細胞は、1.PC12m3, 2.PC12m11, 3. PC12m3-S細胞である。 1.のPC12m3細胞では、リハビリテーション効率を高める物理刺激や薬剤の効果について詳細な分析を行った。物理刺激では、その効果がp38キナーゼを介して神経突起の促進として現れることが解った。さらに5倍も過度な温熱刺激に対しても温熱抵抗性を示す細胞がPC12m3細胞の亜種として現れたのでその詳細な分析を行った。次に薬剤としては主としてアロマテラピーに用いられるリモネンについて検討した。このリモネンは、PC12m3細胞の神経活性にp38キナーゼを介して働いて神経突起伸長の促進作用があることが判明した。 2.のPC12m11細胞では、脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上のための基礎実験を行った。PC12m11細胞はアセチルコリンに高感受性があるがそれは平成23年度の研究でERK酵素を介して、アセチルコリンが神経と筋細胞との接続に働いていることが判明した。平成24年度は、PC12m11細胞の神経筋接続のメカ二ズムをパッチクランプ法によって解明する実験を行ったが今のところ成功していない。 3.のPC12m3-S細胞では、神経細胞の長期生存に働く要因について検討した結果、新たにAkt酵素が働いていることが判明した。そこで24年度は、Akt酵素の活性がどのようにして細胞の長期生存に働くかを調べたところ、Akt を支配しているPI3K遺伝子に突然変異が起きるとその遺伝子は長寿遺伝子に変換することを見いだした。その遺伝子は実際細胞のみならず個体であるマウスの寿命も延長させることが判明し特許の出願を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度と24年度の達成度について、3種類の変異細胞を用いた研究成果の自己点検を行ったところ、1.のPC12m3細胞を用いたリハビリテーション効率を高める温熱刺激や薬剤の開発は、90%以上の達成度があり、2.のPC12m11細胞を用いた脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上の検討は、約70%の達成度があり、3.のPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存に働く要因の検討では、約80%の達成度があると評価した。その理由について説明します。 1.PC12m3細胞を用いた研究;この研究では、p38キナーゼの活性の高い細胞では温熱効果が高いが、さらに振動刺激もp38キナーゼを活性化し、これは実際鬱病患者の改善にも働くことが判明し2012年に論文発表を行った。またPC12m3細胞の5倍の熱抵抗性を示すPC12m3の亜種細胞はAkt酵素の活性化メカニズムに変異をもつ細胞であることが判明した。次に薬剤としてアロマテラピーに用いられるリモネンについてはその成果を2012年に論文発表した。 2.PC12m11細胞を用いた研究;この研究では、PC12m11細胞と筋細胞との接続における詳細な分析をするため、パッチクランプ法を試みたが今のところ成功していないので達成度は70%と評価した。 3.PC12m3-S細胞を用いた研究;神経細胞は長期生存できるメカニズムを備えている。PC12m3-S細胞の長期生存に働く要因についてAkt酵素が働いていることが判明し、Akt を支配しているPI3K遺伝子のサブユニットである調節タンパク質の遺伝子に突然変異が起きるとその遺伝子は長寿遺伝子に変換することを見いだした。その遺伝子は実際細胞のみならず個体であるマウスの寿命も延長させることが判明したがまだ詳細な分析を行う必要があるため、達成度は80%と評価した。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と24年度の研究では、3種類の細胞内シグナル伝達変異細胞を用いて、神経再生とリハビリテーション効率を向上させるための実験を行った。その結果、1.のPC12m3細胞を用いたリハビリテーション効果発現機序の解明はほぼ当初の目的を達成することができた。2.のPC12m11細胞を用いた脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上の研究は、パッチクランプ法の実験に多くの時間を費やしても完成させることができず、25年度に研究費を少し繰り越すことになった。3.のPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存のメカニズムと長期生存に働く要因の検討では、当初の予想とは異なる、長期生存にAkt酵素が非常に重要な働きをしていることが判明し、この研究においても25年度に研究費をかなり繰り越すことになりました。 今後は、PC12m11細胞を用いた研究では、神経筋接続はアセチルコリンを投与するとどのような現象が起こるかを調べることができるパッチクランプ法の解析を継続して行なって解明する予定です。またPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存に働く要因の検討では、PC12m3細胞は、温熱とバイブレーションがp38活性を介して細胞の保護に働くことが判明しているので、PC12m3-S細胞においてバイブレーション、温熱刺激等の効果を調べる。またPC12m3-S細胞が長寿になった原因はAkt経路を支配しているPI3K遺伝子の突然変異があることが判明し、その遺伝子は繊維芽細胞の寿命やマウスの寿命を延長させることが解った。しかしこの実験ではマウスの納入期が4月にずれ込んだため25年度にかなりの研究費を繰り越すことになりました。今後は突然変異型のPI3K遺伝子がどのようなメカニズムで細胞や個体を長寿に導くかについての分析を試みる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度の研究では、2.のPC12m11細胞を用いた脳梗塞片マヒのリハビリテーション効果向上の研究と、3.のPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存のメカニズムと長期生存に働く要因の研究では、当初の予想とは異なり、24年度に研究費を繰り越すことになりました。最初の研究計画では、神経成長因子や酵素の阻害剤等の消耗品も多数必要としておりました。さらに細胞内シグナル伝達系に働く各種酵素の検出に抗体などを予定しておりました。平成24年度の研究では、2.のPC12m11細胞の研究においてパッチクランプ法による解析を試みましたが成功しなかったため一部の研究費を繰り越すことになりました。 またPC12m3-S細胞を用いた神経細胞の長期生存に働く要因の検討では、PC12m3-S細胞が長寿になった原因は新たに、Akt経路の遺伝子の突然変異が原因と考えられ、Aktを支配しているPI3K遺伝子の塩基配列や遺伝子発現を分析するためマウスの実験に多くの研究費を繰り越すことになりました。これは突然変異型PI3K遺伝子を組み込んだマウスの納入が最初予定していました平成25年3月から4月にずれ込んだためです。またこのマウスの研究では新たな実験を引き続き行っており繰り越した残りの研究費を使用します。
|
Research Products
(4 results)