2011 Fiscal Year Research-status Report
有床義歯のウェアラブルセンサー化による健康管理システム
Project/Area Number |
23650352
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
村山 長 広島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60219946)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 医療・福祉 / 生体生命情報学 / 計測工学 / ウェアラブルセンサー / 健康管理 |
Research Abstract |
本研究は,高齢者の多くが着用している有床義歯(入れ歯)に超小型センサーを埋入することにより,高齢者の口腔内の生体情報を常時計測するシステムの実現を最終的な目標とする.また,センサーを埋入した有床義歯を医療の診断や治療に活用する方法も検討する. 平成23年度は,まず,市販されている様々な超小型センサーを(特に,温度センサーと加速度センサーを中心に)調査した.この時,計測したデータを体外へ送信する方法として次の2つの方法のいずれかを持つセンサーをピックアップし,本研究に利用可能と思われるものを選定した:(A)メモリ方式:1日分のデータをセンサー内のメモリに蓄積し,有床義歯を着用しない時にセンサーをコンピュータに接続し,蓄積したデータをコンピュータに転送する方法;(B)無線方式:常時,無線により体外へデータを送信する方法.具体的には,次のものを選定し,購入した:(A1)メモリー方式の温度センサー;(A2)メモリー方式の加速度センサー;(B1)無線方式で温度・加速度の両方を計測できるセンサー. センサーは有床義歯に埋入して使うことになるため,購入したセンサーのうち,A1とA2を有床義歯の材料である常温重合レジンにより封入し,その状態で計測が可能かを実験により調べた.また,温度は真値を温度計で調べることができるため,センサーを封入した状態で計測した値と真値とを比較し,計測の正確さを評価した.その結果,A1,A2とも封入した状態で計測可能であることが分かったが,封入した状態のままでは,コンピュータにデータを転送できず,封入に用いたレジンを破壊してセンサーを取り出す必要があった.また,A1では,計測した値は真値に対して時間遅れは生ずるものの,ほぼ等しい値となり,正確に計測可能であることが分かった. 以上と並行して,ウエアラブルセンサーの最近の動向も,学会などに出席し,調査した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の実施計画は,次の通りであった:(1)適切なセンサーを調査・選定する;(2)選定したセンサーを有床義歯の材料である常温重合レジンにより封入し,その状態で計測およびデータの送信が可能かを実験により調べる;(3)ウエアラブルセンサーの最近の動向を,学会などに出席し,調査する.(1)に関しては,温度と加速度を計測するセンサーについては、ほぼ網羅的に調査できた.(2)に関しては,平成23年度は3タイプのセンサー(A1:メモリー方式の温度センサー,A2:メモリー方式の加速度センサー,B1:無線方式で温度・加速度の両方を計測できるセンサー)を購入したが, そのうち,B1(無線方式のセンサー)をレジンで封入して計測する実験はできなかった.それ以外の実験は予定通り行うことができ,実験に関しては70%近い達成度と考えている.上記の実験ができなかった理由は,封入していない状態で,計測がうまくできないことが判明したためである.この原因については,メーカと連絡を取って,調査しているところである.(3)に関しては,歯科医療の分野では十分調査ができたと思われるが,その他の分野におけるウェアラブルセンサーの調査も進めていきたいと考えている. 計画では、最終年度の平成25年度には,センサーを埋入した有床義歯を被験者に装着して、データを実際に計測予定であるが、そのための予備実験と調査はほぼ予定通り進んでおり、現在までの達成度は3年間の全計画内容の3割程度と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の研究を推進していく予定である.(1)まず,平成23年度に購入したB1(無線方式のセンサー)が使えるかどうかの判断を早急に行い,必要に応じて別の無線方式のセンサーを選定し,購入する.次に,平成23年度に実施できなかった"無線方式のセンサーをレジンで封入して計測する実験"を実施する.(2)A1(メモリー方式の温度センサー),A2(メモリー方式の加速度センサー)については,封入に用いたレジンを破壊せずに,計測したデータをパソコンに転送する方法を検討する.また,実験によりその有効性を検証する.(3)治療への応用として,言語治療にウェアラブルセンサーを使うことを検討する.これは,舌をうまく使えないことにより言語をうまく話せない場合の治療を目的としており,具体的には,有床義歯(実際には,人工歯のない床だけのもの(口蓋床))に舌の位置を計測するセンサーを付け,それを言語治療に役立てる.このため,適切なセンサーの選定と,それを有床義歯の材料である常温重合レジンに取り付け,接触した位置を計測する実験を行う.(4)最終年度の平成25年度には,センサーを埋入した有床義歯を被験者に装着して、データを実際に計測する実験を行い,ウエアラブルセンサーの有効性を検証する.(5)ウエアラブルセンサーの最近の動向を,引き続き,学会などに出席し,調査する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究費の使用計画は以下の通りである.(1)舌の位置を計測するためのセンサーを調査・選定し,購入する.また,必要に応じて,センサーを接続する機器やコンピュータ,その他のセンサーを購入する.40万円の費用を見積もっている.(2)実験に使用する常温重合レジンなどの材料・部品を購入する.10万円の費用を見積もっている.(3)ウエアラブルセンサーの最近の動向を調査するための旅費として,35万円の費用を見積もっている.(4)最近の動向を調査するため学会などに参加するが,そのための費用として,10万円を見積もっている.
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