2011 Fiscal Year Research-status Report
現代社会とコミュニティダンスーコミュニケーション教育への応用可能性ー
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23650369
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
岩澤 孝子 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40583282)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交流(タイ) / コミュニティ / ダンス / アウトリーチ / ファシリテーター / 国際情報交流(アメリカ) / コミュニケーション |
Research Abstract |
国内の事例研究として、札幌市教育文化会館を拠点とする「教文コミュニティダンス部」の活動を毎月二回のペースで観察し、調査を実施した。教文コミュニティダンス部は、コミュニティダンスの普及、ファシリテーター養成を目的に、2010年に札幌市教育文化会館の事業としてスタートした市民によるダンスの団体である。調査の基本的なフローは、ダンスワークショップの企画と実践、ワークショップ時の記録や参加者へのアンケート調査、さらには、これらの資料をもとにしたフィードバック・検証からなる。札幌のケースでは、他2名のファシリテーターがおり、彼らとともに作業全体を進めている。これまでの調査資料をもとに、札幌市におけるコミュニティダンスの現状について、舞踊学会(2011年12月)で発表した。その他、平成23年度はタイとアメリカの二カ国において、海外の事例研究を実施した。タイの現代演劇グループ、Makhampom Foundation(1981-)やアメリカのダンスカンパニー、Dance Exchange(1976-)について現地調査を実施し、コミュニティ・ダンスやコミュニティ・シアターに関する国際レベルでの情報交換を行った。これら二つのグループは、アート(ダンスや演劇)をツールとして、コミュニティに関わる運動を30年以上にわたって実践してきた世界的に評価の高い団体である。特に、ダンス・エクスチェンジは、札幌のコミュニティダンス部設立に大きな影響を与えたグループである。現地調査の実施によって、単にコミュニティダンスのあり方を学んだだけではなく、インターネットを活用した新たな国際交流の可能性を見いだすこともできた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、主要な研究対象である札幌市教文コミュニティダンス部が、予想以上に多様な活動に参加することになり、調査を計画以上に進展させることができた。札幌市民を対象とした札幌市教育文化会館でのダンスワークショップの企画と実践が活動の中心となっているが、その他、東北大震災の影響を受けて、札幌市に受け入れられた福島県からの移住者に対するボランティアイベントへの参加や、高齢者施設でのダンスワークショップなど、アウトリーチ活動への要請・需要があった。多様な問題を抱える現代社会において、様々な場面でコミュニティダンスの場を創出することは、コミュニケーションの新たな手段として有効に作用しうることがこれらのアウトリーチ活動を通して、明らかになった。こうして、平成23年度は、教文コミュニティダンス部の事例に集中した研究に切り替え、その他の事例についても札幌と関連づけて調査を実施することにした。国内では、京都在住のダンス・アーティスト山田珠美への聞き取りを実施し、海外については、アメリカのダンス・エクスチェンジの調査を行っている。これらは同じく札幌のコミュニティダンス設立に大きな影響を与えた存在であり、彼らの動向を知ることは、札幌におけるコミュニティダンスの基本的な性格(方向性)に分析する上で重要と判断した。平成23年度に実施したもう一件の海外調査について、タイでの調査は現段階では札幌との関連はない。しかし、今後、コミュニティダンスの展開として予想されるのは、アジア諸地域との国際交流事業であり、コミュニティアート運動においてアジアのハブとなりつつあるマカンポン財団での調査と交流は、今後の活動や調査に活用可能であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
札幌市教育文化会館での教文コミュニティダンス部の活動についての調査分析を、平成23年度からの継続事項とし、調査を続行する。平成24年度は、これまでに実施したワークショップの内容、対象と場所を整理した上で、いくつかの有効なワークショップのフレーム作りと、ファシリテーションの方法論について、まとめる作業をはじめる。また平成23年度に実施したアメリカでの現地調査資料をまとめ、学会発表を行う予定である。同時に、今年度のもう一つの研究課題として、「学校教育の現場」でのコミュニティダンスの可能性を扱う。「NPO法人 芸術家と子どもたち」が実践している様々なダンスワークショップの事例を調査し、日本国内における学校でのコミュニティダンスの有効な利用法とその問題点について、聞き取りを中心に調査する。さらに、海外での事例については、現代型のコミュニティダンスが最も盛んなイギリスにおいて、ブリティッシュカウンシル等への訪問を含め、イギリス型のコミュニティダンスの傾向と問題点について、ヒアリングを中心に調査を実施する。コミュニティダンスの存在意義は、同時代の社会的な問題と切り離せない部分が多い。イギリスでの調査結果とこれまでの事例研究を総合し、比較研究の観点から、アメリカ、イギリス、タイ、日本のコミュニティダンス成立の背景に隠れた社会の問題傾向について分析したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主要な研究費の使用目的は、前年度と同様、調査旅費にある。内訳は以下の通りである。国内旅費:岩見沢ー札幌(24回)、岩見沢ー東京(4回×2泊3日)、岩見沢ー静岡(1回×2泊3日)、岩見沢-京都(1回×2泊3日)海外旅費:岩見沢ーイギリス(10泊12日)物品費に加えて、調査補助員への謝金、その他(学会参加費など)は、平成23年度とほぼ同様である。
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