2011 Fiscal Year Research-status Report
昭和戦時期、福島県浪江実科高等女学校の女性柔道の展開過程
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23650379
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Research Institution | Sendai National College of Technology |
Principal Investigator |
名久井 孝義 仙台高等専門学校, 総合科学系, 名誉教授 (40100755)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 女子柔道 |
Research Abstract |
本研究は、戦時下・銃後の護り・柔道をキーワードに福島県浪江実科高等女学校柔道部の史的解明をとおして昭和戦時期の女性スポーツの実像に迫ることが目的である。2011年の大震災と原発事故とのからみで、平成23年度は当初の研究計画を変更し、浪江実科高等女学校(以下、浪江実科高女という)の歴史社会学的基礎資料の収集をした結果、以下の貴重な資料を収集し課題解決に迫ることができた。 1.福島県教育史や同教育史編さん資料などから浪江実科高女(昭和2年創立)は、福島県内の女学校でも比較的遅くつくられた女学校で伝統に縛られない教育環境にあった。 2.浪江実科高女の柔道部創設に関わった当時の校長根本貞治は、昭和戦前期から戦後にわたって福島県教育界で中核的立場(郡視学や県視学を経て戦後県教育委員を歴任、知事や厚生大臣表彰を受賞、昭和40年に勲四等瑞宝章)にあり、独自の教育を実現できる地位にあった。なお、終戦の直前に福島県内郷町長(当時)の職にあり、浪江町史など町村史等から根本の生家を掘り起こしたが、廃虚と化していたものの遺族に辿り着き、根本関連資料と聞き取り調査を継続している。 3.福島県立図書館蔵の浪江実科高女同窓会編の「同窓会報第2号」を発掘し、創刊号や続刊を探索中である。また、福島県教育史編さん資料から「学校沿革誌-昭和2年~昭和43年-」(現浪江高校)の存在を割り出したが、二本松市に避難している浪江町民からの現況聞き取りを踏まえて、安積高校にサテライトしいる浪江高校からの資料収集調査は控えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度の浪江実科高等女学校(以下、浪江実科高女という)の歴史社会学的基礎資料の収集は概ね達成したが、原発事故の関係で研究実績の概要に示したように課題解決に迫る資料収集や当時浪江実科高女に在籍した生徒の生存・所在確認に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
研究事例校のある浪江町は、4月の「避難指示区域の再編」後も今後の同町の在り方を模索中である。現在同町は、暫定的コミュニティーとして「リトル浪江」構想を打ち出し、8月までに復興計画を策定中である。避難者(現浪江高校の実情)の感情に配慮しつつ以下の3点から課題解決に迫る。 1.避難者の現況調査で面会した同町住民T氏(浪江実科高女が併設されていた浪江小学校付近の住民)からの情報を踏まえつつ、現浪江高校での福島県教育史編さん資料から得た「学校沿革誌-昭和2年~昭和43年-」の収集、浪江実科高女同窓会編の「同窓会報」創刊号や第3号以下の続刊の掘り起こしと収集を試みる。 2.当時の在校生からの「生の声」聞き取りが困難な場合を想定して、浪江町に隣接する現南相馬市や現いわき市で発刊された入手可能な地方紙(常磐毎日新聞や平新報など)から課題解決に迫る記事を掘り起こす。 3.研究課題達成の要は当時の在校生からの「生の声」の聞き取りによる史的実像の解明である。関係者の心情に配慮しつつ可能な限り「生の声」収集に努める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1.浪江実科高女(現浪江高校=サテライト校安積高校)での福島県教育史編さん資料から得た「学校沿革誌-昭和2年~昭和43年-」の収集、浪江実科高女同窓会編の「同窓会報」創刊号や第3号以下の続刊の掘り起こしと収集のための調査。 2.浪江町に隣接する現南相馬市や現いわき市で発刊された入手可能な地方紙(常磐毎日新聞や平新報など)から課題解決に迫る記事の収集のための調査。 3.可能な限り、当時の在校生からの「生の声」の聞き取り調査と研究課題である戦時下・銃後の護り・柔道の解明に関連する類似校の品川高等女学校(当時)や神奈川県下女子中等学校武道大会(昭和14年開催)参加校に関連する資料を講道館等から収集するための調査。
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