2012 Fiscal Year Annual Research Report
昭和戦時期、福島県浪江実科高等女学校の女性柔道の展開過程
Project/Area Number |
23650379
|
Research Institution | 仙台高等専門学校 |
Principal Investigator |
名久井 孝義 仙台高等専門学校, 総合科学系, 名誉教授 (40100755)
|
Keywords | 柔道 / 女性 / 昭和戦時期 / 事例研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、昭和戦前期における浪江実科高等女学校(現在の福島県立浪江高校)の女性柔道の実態を明らかにして、柔道・女性・戦時期をキーワードに15年戦争下での女性柔道の特徴を事例的に提示することにある。 23年度は東日本大震災・原発事故の関係で浪江町全域が町外避難を強いられたために同校に関する歴史資料の収集や卒業生からの聞き取り調査が困難であったが、24年度に入り同校学校沿革誌などの資料を入手したほかに研究対象時期に在籍した卒業生4人からの聞き取りを行った。 その結果、以下の知見が得られた。1)同校(創立:1927年)での女性柔道は、学友会(創設:1928年)傘下の「柔道部」(創部:1935年)というかたちで行われ(存続期間:1935年から1940年)、当時の校長や講道館有段者の指導の下で、柔道の技の向上や旧来の良妻賢母をこえた活発な女性(当時の資料では「板額」的女性)を目指して、生徒の自主的な参加により営まれた集団であった。2)同校柔道部は、雑誌『柔道』(刊行:1937年)で「女子柔道界で大きな力を与える」活動として、また、朝日新聞(1941年2月16日付)で「宛然体育校の浪江実科高女」として論評されるなど、昭和戦前期の女性柔道界で画期的な存在であった。3)同校の生徒は、柔道部消滅(1941年)後に軍事色を帯びた教育活動(特に1943年頃から)や戦時下(非常時下)での生きる術の実践に追い込まれる教育状況と本土防衛戦(銃後の護り)を前提にした講道館での「講道館女子柔道護身法」の制度化(1943年)を踏まえると、それ以前に存在した同校柔道部の活動は、15年戦争の「戦時下」ではあったが、柔道の技を磨くことに傾注した活動的な女性を育む「平時の活動」であったことが判明した。
|
Research Products
(1 results)