2011 Fiscal Year Research-status Report
スポーツパフォーマンスを高める腱組織の伸展性に及ぼす遺伝子多型の影響
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23650386
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
久保 啓太郎 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (70323459)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | コラーゲン / 腱 / ヒト生体 |
Research Abstract |
本研究では、腱の主な構成要素であるタイプ1コラーゲンの遺伝子多型と腱の伸展性との関係を明らかにすることを目的とした。被検者は、若年男性57名であった。被検者には、力発揮を行わせている際の外側広筋および腓腹筋内側頭の縦断画像を超音波診断装置を用いて撮影し、得られた画像から、筋束と腱膜の交点の移動距離を腱組織の伸張量として計測した。最大筋力発揮時の腱伸張量を最大伸張量とした。本研究で当初最初に分析に用いることを予定していたタイプ1コラーゲン遺伝子多型は、複数の先行研究でアキレス腱や前十字靭帯を損傷した患者と健常者の間にタイプ1コラーゲン等の遺伝子多型に差異がみられることが報告されているCOL1A1(rs1800012)であった(e.g., Posthumus et al. 2009)。しかし、これらの先行研究は欧米人を対象としたものであり、障害と関連が示唆されているTT genotypenoの頻度は、NCSIのデータベースによるとアメリカ人で18%、アフリカ人で2%であり、頻度はもともと低い。実際に本研究の被検者を対象にして調べた結果、全員がGG genotypeであった。そこで本研究では、複数の先行研究で(e.g., Jiang et al. 2007)、骨粗鬆症との関連が示されているCOL1A1(rs1107946)を新たに分析対象とした。その結果、3つの多型間で腱の最大伸張量に差はみられず、腱特性はタイプ1コラーゲンの遺伝子多型と関連がみられないことが明らかになった。しかし、サンプル数が不十分であり、はっきりした結論を導くまでには至らないのが現状である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まず57名を対象にして、分析を委託している(株)G&Gサイエンスで分析可能なタイプ1コラーゲンの遺伝子多型について解析を行った。その結果、腱特性と遺伝子多型との間には関連がみられなかった。本研究で扱う『腱特性』は測定および分析に非常に多くの時間と労力を要するため、なかなかサンプル数を増やすことは容易ではない。しかし、今後はこのペースで被検者を増やしていければ、「腱特性と遺伝子多型との関連」についてある程度の結論を導けるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、分析を委託している(株)G&Gサイエンスで分析可能なタイプ1コラーゲンの遺伝子多型について解析を行ったが、今後は先行研究で腱だけでなく、骨や血管の疾患との関連が報告されている遺伝子多型との関連も検証する必要がる。そのために、解析用の試薬を(株)G&Gサイエンスで開発して頂く予定である。その開発に要する間に、今年度と同様の方法で被検者数を増やしていく予定である。さらに、これまでの我々の研究で明らかになっている腱特性が極端に異なる陸上長距離選手(Kubo et al. 2000 Eur J Appl Physiol; Kubo et al. 2010 Eur J Appl Physiol)や短距離選手(Kubo et al. 2000 Acta Physiol Scand; Kubo et al. J Appl Biomech)も被検者に加えて、腱特性に対する先天的要因と後天的要因の関連を検証していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
新たな遺伝子多型に用いる試薬を開発を(株)G&Gサイエンスに依頼する。さらに、測定に際しては、筋電図電極等の消耗品、被検者への謝金、および測定検者への謝金を必要とする。
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Research Products
(2 results)