2011 Fiscal Year Research-status Report
登山者におけるリスクイメージの構造とリスク下での意思決定
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23650387
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
村越 真 静岡大学, 教育学部, 教授 (30210032)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | リスク認知 / GTA / 登攀 |
Research Abstract |
本年度は、文献調査および先鋭的なクライマーに対するインタビュー調査によるリスクに対する意識についての調査と、イギリスの登山研修におけるリスク管理の実態調査を行った。 予備的調査では、先鋭的クライミングに関する雑誌・書籍記事の内容をKJ法によって整理することで、クライマーがリスクが登山という行為に不可欠なものであると考えていると同時に、リスクをコントロールする意識を強く持ち、またそのために事前の様々な準備、クライミング中における最悪の状況のイメージやそれに対応する細心の注意と努力を払ってクライミングを行っていること、その背後にあるクライマーの心的能力の全体像が明らかになった。またイギリスの登山研修所では実際の講習現場に立ち会い、講師のリスクに対する意識やそれに対応した行動を観察した。 年度後半では、予備的調査に基づき、ピオレドール受賞者も含む日本の先鋭的クライマー5名へのインタビュー調査を実施した。インタビューは現在進行中である。 以上のことより、高リスク活動の熟達者だと考えられるクライマーは、不確実さを不可欠の要素と考えているという点でリスク志向的ではあるが、リスクを発生させる状態をより明確にイメージすることができ、それを行動中の意志決定に援用することでそのリスクに対するコントロール感覚を持っていると考えていること、結果的に「楽観主義バイアス」とされる実態の背後には、こうしたコントロール感覚があることが示唆された。今後は、インタビューの分析をGTAにより行うことでこの点を確認するとともに、質問紙による一般のクライマーとの差異を検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画書では、23年度には、インタビュー調査およびそのGTA分析とそれに基づく質問紙調査を実施する計画となっていたが、現状では、インタビュー調査をほぼ終えた状態る。しかしながら、インタビュー調査はほぼ終了し、また同時並行的に質問紙の構成については構想を進めていること、当初計画では、本年度の研究内容は、シナリオインタビューに限られていること、シナリオインタビューについては熟達者の集団である日本山岳ガイド協会の協力が得られることなどから、取り戻すことが十分可能な遅れであると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定とおり、インタビュー結果をGTAによりまとめ、クライマーのリスク認知の背後にあるプロセスや要素を明らかにするとともに、200人程度の登山者を対象とした質問紙調査を実施、多変量解析手法により分析する。 平行してリスクを含むシナリオに基づくインタビューより、リスクイメージの違いが実践現場での意志決定プロセスにどのように影響しているかを、実践に近いシナリオを元にしたインタビューによって検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
質問紙の作成および入力・インタビューのテープ起こしのための謝金に38万円、シナリオインタビュー(約10名)のための旅費に12万円、謝礼に6万円、消耗品に4万円を使用する予定である。
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