2011 Fiscal Year Research-status Report
筋収縮特異的に亢進する基質流入を調節しているトランスポーターの役割
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23650404
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
増田 和実 金沢大学, 人間科学系, 教授 (50323283)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | トランスポーター / カルニチン / 骨格筋 / 脂肪酸 / 代謝 |
Research Abstract |
骨格筋の脂肪酸代謝は様々な要因によって制御されている。カルニチンは脂肪酸代謝に必須の基質であり、脂肪酸をミトコンドリアマトリックス内へ移動させると理解されている。ただし、骨格筋はカルニチンを合成することができないため、必要とされるカルニチンを細胞外から輸送しなければならない。骨格筋のカルニチン輸送についてはほとんど解明されておらず、その機序には不明な点が多い。そこで本研究では、カルニチン輸送に関わるとされているトランスポーター(OCTN2)に注目して、OCTN2の筋細胞内における発現分布や筋収縮刺激による骨格筋細胞内へのカルニチン取り込みの変化を検証した。ラットの下肢から摘出した骨格筋を組織化学的に分析し、OCTN2の細胞内含量を比較した。組織画像から得られた各筋繊維を収縮特性(Type I線維、Type IIa 線維、Type IIb線維)や代謝特性(ミトコンドリア量の多寡)を考慮しながらOCTN2の細胞内含量を比較した。その結果、筋細胞内のOCTN2はミトコンドリア量に依存して多く発現していることが示唆された。また、麻酔下にてラットを足底屈筋力測定装置に固定し、下腿三頭筋表面に貼付した表面電極を介して電気刺激による筋収縮を誘発し、活動筋へのカルニチン取り込み量を検証した。対照脚(反対脚)に対して比較したところ、筋収縮によって下腿三頭筋へのカルニチン取り込み量が有意に亢進した。また、その亢進量は、筋収縮による血管拡張(血流上昇)によって説明できなかった。収縮後に細胞膜画分を回収して生化学的に分析したところ、OCTN2量が収縮後に上昇していた。これらのことから筋収縮によってOCTN2の細胞内局在が変化し、カルニチンの細胞内流入を機能的に促進している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vivoでOCTN2の筋細胞内局在変化がカルニチン流入の促進機序として働いているという興味深い証拠を得ることができた。その機序を検証するための骨格筋培養細胞を用いた実験系の準備も進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
細胞内の局在変化がなぜ生じるのかを明らかにするためにも、骨格筋培養細胞(L6培養筋芽細胞)において、分化誘導により筋管を形成させる。[3H]carnitineを一定時間負荷し、細胞回収後の放射活性をもとに細胞内へのカルニチン取り込み量を測定する。このモデルにおいて、カルニチン、あるいは、薬理学的な筋収縮摸倣刺激を負荷し、カルニチンの取り込み量、速度の変化を同定する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ラットの電気刺激筋収縮実験中(in vivo実験)の再検証を含めながら、骨格筋培養細胞系を用いた実験(in vitro実験)を重点的に推進する。そのために必要とされる培養細胞関連試薬やプラスティック消耗品、分析用試薬(抗体、酵素、一般試薬)や分析関連消耗品が主な使途内容となる(100万円程度)。また、学会・研究会への出席に要する旅費(15万円程度)や分析補助者に対する謝金(15万円程度)も使途とする予定である。
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Research Products
(8 results)