2011 Fiscal Year Research-status Report
大気圧プラズマ照射による骨格筋培養細胞の活性化と個体への応用
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23650405
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中井 直也 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90324508)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | プラズマ / 骨格筋 / C2C12細胞 |
Research Abstract |
筋芽由来の培養細胞であるC2C12細胞に対する大気圧マイクロ波放電プラズマ照射の影響を検討した。10%ウシ胎児血清(FBS)を含む培養液中でC2C12細胞を培養し、実験に供した。異なるガス流量、電力、処理時間でプラズマ照射を行い、30分後に細胞を回収し、細胞ストレスの指標となるExtracellular-regulated kinase (ERK) 1/2およびc-jun N-terminal kinase (JNK)のリン酸化をWestern blot法で解析した。プラズマ発生に用いるアルゴンガスの流量を1 slm (standard liter/min)と4 slm で検討したが流量による差は認められなかった。一方、プラズマ発生時の電力は、10, 30, 70 90 Wと大きいほど、ERKおよびJNKのリン酸化は高まった。照射時間は1分間ではリン酸化の誘導が低く、3分間以上が必要であることが認められた。プラズマ照射の影響が培地成分を介しているか否かを検討するため、プラズマ照射(30 W, 5 min)後の培養液を非照射細胞の培養液と交換したが、ERKおよびJNKのリン酸化は照射細胞でのみ確認された。したがって、プラズマ照射は直接細胞に影響を及ぼしていると考えられた。細胞の分化や増殖には一酸化窒素(NO)が関与しているとの報告がある。そこで、プラズマ照射30分前にNO合成酵素阻害剤L-NAME(N-Nitro-L-arginine methyl-ester)を加え照射(30 W, 5 min)を行った。その結果、L-NAMEは濃度依存的にプラズマ照射によるJNKのリン酸化を抑制した。以上の結果より、大気圧マイクロ波放電プラズマは、筋芽細胞に直接作用し、NO生成を介してERKおよびJNKのリン酸化を高めることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の研究実施計画は以下の2項目であった。1.プラズマ照射の至適条件の検討:プラズマを発生させるアルゴンガスの流量、発生時の電力、照射時間について様々な条件で検討を行い、指標とするタンパク質のリン酸化に対して効果の高い条件を決定することを計画通りに達成した。加えて、プラズマ照射の影響は、細胞培養液を介するものではなく、直接的に細胞を刺激していることを明らかにした。2.プラズマ照射による細胞増殖および分化に対する影響:本年度はプラズマ照射の急性効果を中心に解析したため実施予定であった細胞増殖および分化への影響については、次年度に実施することに変更した。しかしながら、24年度に実施予定であったプラズマ照射がいかなる分子を介して伝達されているかについての検討はすでに解析を実施した。その結果、プラズマ照射は、細胞内での一酸化窒素合成を介してタンパク質のリン酸化を高めていることを明らかにした。当初の研究実施計画の実施順序を変更したが、未実施の計画については予定している2年間の研究期間内で達成できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度には、プラズマ照射が細胞に及ぼす影響をさらに詳細に検討するため、まず筋芽細胞への複数回の照射による分化誘導効果について解析を実施する。23年度の研究結果より、プラズマ照射は一酸化窒素の合成を高める可能性が考えられるため、C2C12細胞の分化にも影響があることが予想される。また、骨格筋により近い条件を実現するため電気刺激を加えた筋管細胞へのプラズマ照射の影響を解析する。最終的にはラット骨格筋へのプラズマ照射を行い、個体への効果について明らかにする。骨格筋への照射については、筋表面を露出させることから細胞とは異なった照射条件を設定する必要があると考えられる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度に購入予定であった「培養細胞ペーシングシステム」を購入しなかったため、次年度使用額が増加した。培養細胞ペーシングシステムは、筋管細胞に電気刺激を加えることに使用する。今年度に当備品を購入し、それ以外を物品費および研究成果発表のための国内旅費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)