Research Abstract |
Mayer波帯域における血圧-心拍数間の線形相関性は,安静時に強く,映像刺激入力や姿勢変動の際に弱くなる.この現象は,「安静時には主として心拍数調節が行われ,環境変化時には心拍数調節ばかりでなく血管抵抗調節が行われる」という仮説(心拍数調節と血管抵抗調節の役割分担仮説)で説明できる可能性がある.本研究では,この仮説を検証するとともに,この仮説に基づいてゲーム用脈波センサを利用した日常的に使用できる血圧反射機能推定システムの開発を目的とした. 本年度では,まず,血圧反射機能の基本的な特徴を明らかにするため,血圧反射機能を司る循環制御系の特徴を表わす指標のうち,判別力と再現性の高い指標を探索した. 実験では,健常被験者(若年者36人(24.1±4.3歳),高齢者12人,(70.1±4.3歳))を対象として,安静状態から呼吸統制状態に遷移することにより過渡的状態を作った.このとき,心電図・連続血圧・光電容積脈波を計測した.計測量から,相関性を高める修正を施した脈波伝搬時間のパワーに対する心拍間隔のパワーの比の平方根であるαPTT,および,光電容積脈波の振幅値に関するその高周波成分に対する低周波成分の比であるμPAを計算した. その結果,これら2つの指標は,他の従来指標と比較して,高齢者群と若年者群との間の判別力が高く,かつ,級内相関係数の観点から再現性の高い指標であることが明らかとなった.αPTTは,脈波伝搬時間に基づくため,光電容積脈波に加えて心電図計測が必要であるのに対し,μPAは光電容積脈波のみで計算できる指標であるため,ゲーム機用センサーでも利用できるため,応用可能性が高い指標であると言える.
|