2011 Fiscal Year Research-status Report
思春期の子どもの心理的変数をアウトカムにしたストレスタンパク質と成長因子の解析
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23650426
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
小川 貴志子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20508676)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野井 真吾 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (00366436)
阿部 茂明 日本体育大学, 体育学部, 教授 (30089776)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 健康教育 / 健康推進活動 / バイオマーカー / 疫学 / 思春期 / 運動 / 人権・権利 |
Research Abstract |
日本の思春期の子どもの情緒的幸福度(emotional wellbeing)は、諸外国と比べて極めて低い。その要因が、親や教師、友人などとの人間関係の脆弱さにあると考えられている。周囲の人との関係性が低いことが、非行、自殺への危険を増幅させることにもなる。しかし、子どもの発達に鑑みた人間関係構築における躓きやその社会的要因、非行や自殺へと至る決定要因などについては、未だ十分な検討が行われていない。本研究は、ストレスタンパク質や成長因子などの生化学指標を用いて、子どもの生活や社会的背景と心理的ストレス状態との関連性を検討するものである。1.昨年度、我々は問題行動のある子どもを指導する現場教員からのインタビューを行い、子どもの生活や問題について、インタビューの逐語録からグラウンデッド・セオリー・アプローチ解析を行った。この結果からメラトニンの重要性を確認している。2.グラウンデッド・セオリー・アプローチ解析により、社会的な問題背景と子どもの問題行動との関連が強いことが示唆されたため、全国地方自治体を対象に子どもの保護と育成に関する質問紙調査を行った。現在回収作業中であるが300以上の自治体からの回答を得ている。この結果により子どものストレスやうつ状態とその社規背景との問題点を明らかにできると考える。思春期の子どもの情緒的心理的幸福度を向上させ、心理的ストレスをコントロールする方策を見つけることは極めて重要である。本研究は、様々なストレスや成長に関する生化学指標と心理状態、子どもの生活や社会的背景との関連性を解析することにより、問題事象を早期に発見し、かつ問題の機序を推測することが可能になる。果たして、遊び・運動・祭り・学校行事など地域社会や教育現場での取り組みがこれらストレス状態に与える影響も解析でき、思春期対策に大きく寄与できると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題において、昨年度は、思春期の子どもの親や教師、友人などとの人間関係と情緒的幸福度との関連を、問題行動のある子どもを対象にしたグラウンデッド・セオリー・アプローチ解析を行うことにより、思春期の子どもの持つ問題の共通点と多様性を明らかにできたことは大きな成果であった。この解析により、子どもの持つ共通の問題が家庭もしくは地域社会の問題と密接に係ることが解明されたため、3000か所にわたる全国自治体への質問紙調査を行っている。グラウンデッド・セオリー・アプローチによる研究成果に関して、教育現場での経験が豊富で、経験に基づく子ども研究をおこなっている養護教諭へのインタビューを行った。その逐語録から思春期の子どもの親や教師、友人などとの人間関係と情緒的幸福度との関連を、問題行動のある子どもについて解析した。その結果、子どもの家庭とその経済状態及び地域社会との関連が非常に大きいことが確認できた。例えば、自傷行為、性産業の犠牲となる子どもの場合、家庭の経済状態が大きく反映している。しかし、経済状態が悪くても問題行動へと至らない子どもも多く、この差は、親や教師など大人との人間関係が非常に密接であることがわかった。一人一人の子どもの問題を理解し、話を聞くという時間が子どもを取り巻く大人に持てているかどうかも大きな課題であることが判明した。そこで、地域社会が子どもの保護・育成に関して行っている取り組みを知るために、全国地方自治体への質問紙調査を行っているが、たとえ子どもの保護育成に関連する質問においても、質問を答えるのにあたって、数か所の部署へ質問がまわっているようで、地方においても縦割り行政の弊害が認められる。まだ、質問紙の回収を行っている段階ではあるが、質問紙に関する電子メールや電話での問い合わせで、すでにこれらの問題が垣間見えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策として当該年度では2つの項目を考えている。一つは、問題行動のある子どもについてのインタビューや生化学検査の数を増やし、問題行動のない子どもとの比較を行うことである。さらに、課外活動や学校行事など教育現場での取り組みが子どものストレス状態に与える影響を検討する。二つ目は、子どもの生活背景・社会背景と問題行動との関連について、現在行っている質問紙調査からの解析を進める予定である。具体的には以下の計画を考えている。1. 13歳から18歳まで思春期の子どもを対象に身体活動量、ストレスタンパク質と成長因子の生体指標結果をsurrogate markerもしくは共変量として、ストレスや抑鬱状態に関する調査結果と比較検討する。さらに友人や保護者、教師との関係についてインタビューを行い、文章化した逐語録をグラウンデッド・セオリー・アプローチにより解析し心理的問題と生活背景の関連部分を探る。2. 上記の基盤研究から問題行動や抑鬱度の顕著な者を検出する妥当性と信頼性に優れた質問項目を抽出し、問題行動や抑鬱度の顕著な者を検出する妥当性と信頼性に優れた質問紙の開発を行う。この時、心理的ストレス状態をアウトカムとし、生活スタイルの項目を共変量とし、検出力には受診者動作特性(ROC曲線)を用いて解析を行う予定である。様々なストレスや成長に関する生化学指標と心理状態、子どもの生活や社会的背景との関連性を解析することにより、問題事象を早期に発見し、かつ問題の機序を推測することが可能になると考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度では次の計画に研究費用を使用する予定である。昨年度は、地方自治体への質問紙だったので質問項目も多くはなかったが、当該年度では思春期の子どものストレスや鬱解析を詳細に行うため質問項目も多くなる。従って、1. 質問票作成のための印刷費と郵送費に研究費を使用する予定である。さらに、現在回収作業を行っている地方自治体への質問紙調査も解析のためのデータ打ち込み費用が必要になると考えている。2. インタビュ―の数も増やすため、逐語録作成のための委託費と人件費に研究費を使用する予定である。3. その他、グラウンデッド・セオリー・アプローチの解析精度を向上させるために研究会の開催を予定してる。この印刷費、人件費などが必要と考えられる。
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Research Products
(22 results)
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[Presentation] 血清プラスマローゲンの認知機能評価の血液バイオマーカーとしての有効性の検討2011
Author(s)
前場良太, 藤原佳典, 荒木厚, 小川貴志子, 安永正史, 長沼亨, 石井賢二, 原博, 西向めぐみ, 岡崎具樹, 松本英之
Organizer
日本認知症学会
Place of Presentation
東京
Year and Date
20110000
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[Presentation] 温泉施設を活用した複合介入プログラム「すぷりんぐ」-メタボ予防効果の検証2011
Author(s)
斎藤京子, 藤原佳典, 桜井良太, 金憲経, 深谷太郎, 安永正史, 金美芝, 西川武志, 小川貴志子, 渡辺修一郎, 鈴木克彦, 田中千晶, 吉田裕人, 新開省二
Organizer
日本公衆衛生学会
Place of Presentation
秋田
Year and Date
20110000
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[Presentation] 温泉施設を活用した複合介入プログラム「すぷりんぐ」-介護予防型プログラムの検証2011
Author(s)
桜井良太, 藤原佳典, 金憲経, 斎藤京子, 安永正史, 野中久美子, 小林和成, 小川貴志子, 吉田裕人, 田中千晶, 内田勇人, 鈴木克彦, 渡辺修一郎, 渡辺直紀, 新開省二
Organizer
日本公衆衛生学会
Place of Presentation
秋田
Year and Date
20110000
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[Presentation] 養護教諭の職務研究―IUHPE会議での報告を通して得た成果と課題2―「保健室からの学校づくり」2011
Author(s)
野口司, 宍戸洲美, 富山芙美子, 白澤章子, 斉藤静栄, 齋藤淳子, 新谷チヨ子, 中村富美子, 舟見久子, 古野桂子, 松本順子,松本稜子,小川貴志子
Organizer
第58回日本学校保健学会
Place of Presentation
名古屋
Year and Date
2011.11.12
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