2011 Fiscal Year Research-status Report
電子媒体社会における生活者への影響とサステナビリティーの考察
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23650445
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 哲也 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (20252546)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 電子媒体 / 印刷媒体 / 使いやすさ / 視覚ストレス / 生活者 / サステナビリティー |
Research Abstract |
私たちの生活において,本やノートなどの紙媒体からiPadなどの電子媒体への移行が急速に進む中で,生活者や生活にさまざまな影響を与えていると推測される.そこで,本研究では,使いやすさはどうなのか,使用している際の視覚ストレスや疲労はどの程度なのか,LCAはどうなのかを検討する.具体的には,視覚ストレスの場合は,紙製媒体と電子媒体の使用実験(官能検査)を行い,生活者(被験者)のそれぞれの使用感とその違いを明らかにする.紙製媒体と電子媒体の使用実験(官能検査)を行い,生活者である被験者それぞれの視覚ストレス・疲労とその違いを明らかにすることを目的としている.平成23年度は,紙媒体と電子媒体とでどの程度使いやすいのか,また,視覚ストレスがあるのかについて,両媒体による読書の中で,ミススペルを見つけ,そのミススペルを見つける速度はどうなのかという使用実験を行った.その結果,紙媒体の方が電子媒体よりミススペルを見つけた個数が多く,また,ミススペルを見つける速度が著しく速かった.この結果から,視覚ストレスについては,電子媒体の方が視覚ストレスがあることがわかった.また,使いやすさについては,この実験からだけでは断言はできないが,視覚ストレスに伴って,紙媒体の方が電子媒体より使いやすいと推測された.また,別途,紙媒体のLCAについて,製紙会社に行ってインタビュー調査を行ったが,実際の工程は複雑で,使用する素材やエネルギーが変化するため,LCAの評価・計算が難しいことがわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である使いやすさはどうなのか,使用している際の視覚ストレスや疲労はどの程度なのか,LCAはどうなのかの3つのうち,視覚ストレスについては,実験を通してとりあえずの結果が得られ,それを元に考察できた.また,使いやすさについても推測にとどまるが,実験結果から一応の推測ができ,今後の研究と実験に仮説として使うことができると考えられる.一方,LCAについては,実際の評価・計算は難しいことがわかった.以上のことから,3年の研究期間の初年度としては,おおむね順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に引き続き,視覚ストレスに関する実験を行い,得られた紙媒体と電子媒体に対する結果を比較して,使用者への負荷について考察する.また,使いやすさに関しては,アンケート調査と官能評価実験を行い,アンケート調査では,生活者の紙媒体と電子媒体に対する使いやすさの感覚と認識を調べ,官能評価実験では,紙媒体と電子媒体の使いやすさを,一般的な使用状況の中で,それぞれの媒体の使いやすさを間接的に評価できる主観評価法や直接的に比較できる一対比較法などを用いて実験を行い,できるだけ数量的に調査結果を解析することを試みる.また,海外の研究協力者とも連携して,海外での視覚ストレスの実験や使いやすさに関しての意識調査を行い,日本で得られた結果との比較検討を行う.紙媒体と電子媒体のLCA評価に関しては,どのような形で評価できるのか,インタビュー調査や文献検索等を引き続き行い,その可能性を探る.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初の予定に沿って研究費を執行する予定である.具体的には,データ処理のためのパソコンの購入,実験に伴う消耗品の購入,また,旅費に関しては初年度で得られた結果を国際会議で発表することと,海外の研究協力者との共同研究を進めることに使用する予定である.
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