2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650461
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Research Institution | Oyama National College of Technology |
Principal Investigator |
酒井 洋 小山工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (90310648)
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Keywords | ムチン / 界面化学 / 表面張力 / 可溶化 / 糖タンパク質 / 界面活性剤 / ズダン / pH |
Research Abstract |
本研究は、ムチンによる繊維加工に挑戦するための基礎研究となるものである。そのために、ムチンの基本的な界面化学的性質を明らかにするというのが本研究の目的である。 今年度は、まず初めに、ムチンと界面活性剤との相互作用を明らかにするため、リン酸緩衝液(pH7.0)を使用して、濃度0.02mg/mLの豚胃ムチンと、濃度を変えたドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の混合水溶液を作製し、その表面張力の経時変化を測定した。その結果、SDS濃度が0.1mMでは15時間ほどかけてほぼ平衡に達したが、濃度0.2~0.35mMでは、24時間経過しても平衡に達しなかった。また、0.4mM以上では、1時間以内に平衡に達した。これらの結果は、昨年度の結果であるムチン単体の溶液の挙動と大きく異なり、特異的なムチン-SDSの相互作用を示唆するものとなった。また、24時間後の表面張力の到達値が、SDS濃度0.2~0.35mMでは、ムチン単体またはSDS単体の物よりも低下し、この濃度範囲で疎水性の高いcomplexを形成しているものと考えられる。 続いて、酸性溶液(塩酸-グリシン緩衝液)中のムチンの挙動を調べるため、表面張力の経時変化と、可溶化能の検討を行った。酸性溶液中では中性溶液中よりもさらにゆっくりと表面張力は低下し、測定濃度範囲内では24時間で平衡に達しなかった。また、昨年度と同様の手法で水に不溶な油溶染料であるズダンIIIを用い、その可溶化限界量を求めた。その結果、0.1mg/mL付近から可溶化限界量は急激に上昇したが、その量は中性溶液中よりも小さな値となった。以上の結果は、ムチンが酸性溶液中では中性溶液中とは異なる構造を持つことを示唆するものであり、このムチンのpH応答性を利用して、例えばムチンのDDSへの応用に繋がるものであると考えられる。
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Research Products
(1 results)