2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650469
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Research Institution | Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
中川 洋 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 量子ビーム応用研究センター, 研究副主幹 (20379598)
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Keywords | 食品と貯蔵 / テクスチャー / 中性子 / 水和 / ガラス |
Research Abstract |
乾燥食品は、水分活性値を下げることで腐敗の原因となる微生物の増殖を抑えるとともに、ガラス状態にすることで食品の安定性を向上させている。食品のガラス化は食感とも関わり、食品の品質を決める重要な要因となる。しかし、食品中の水の物理化学的状態が 、水分活性値やガラス転移とどのように関連しているかは不明な点が多い。そこで本研究では、中性子散乱実験により食品タンパク質中の水の動的挙動を調べ、水が食品の水分活性やガラス転移に与える影響を明らかにすることを目的とした。研究を通じて、中性子散 乱実験による新たな食品分析法を確立するとともに、水が食品と相互作用することによって発現する食品機能特性(保存性と食感)の分子論的基礎を確立することを目指した。 蛋白質の水和水の拡散定数を中性子準弾性散乱から求め、バルク水と比べ著しく拡散定数が減少していることを見出し、さらに脱水和状態から水分量を増加したときに、h=0.37( g D2O/g protein)を超えると水の運動性が増すことを拡散定数によって確認した。そしてこの水分量を境に、自由水が現れることを示唆することができた。この自由水の出現が、ガラス転移の出現と連動していることから、食品の水分活性値や粘弾性特性は、蛋白質との相互作用で発現する水分子の物理化学的特性が密接に関わっていることを示した。 水和研究のモデル蛋白質で得られたこれら研究成果は、具体的な食品の特性や品質の解析に適用していくことが、今後の研究展開として重要である。
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