2011 Fiscal Year Research-status Report
腸内フローラを指標とする健康評価法の開発と食生活管理システムの構築
Project/Area Number |
23650474
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
近藤 壽彦 群馬大学, 保健学研究科, 准教授 (10162108)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 腸内フローラ / 健康評価法 / 食生活管理システム |
Research Abstract |
腸内フローラの解析から健康状態を評価するための客観的指標として、(1)善玉菌と悪玉菌の比から腸年齢を推定する方法、(2)バクテロイデス門とファーミキュート門の比から肥満状態を推定する方法など、本年度は主として分析系の確立と分析条件の最適化に主眼を置いた。すなわち、ヒトの腸内にユビキタスに存在する菌群から、善玉菌としてビフィズス属の2菌種と善玉菌と同レベルに腸内に存在する比較菌2菌種を選定した。また、悪玉菌としてウェルシュ菌を含むクロストリジウム属から2菌種と悪玉菌と同レベルの比較菌2菌種を選定した。そして、それぞれの16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列から、善玉菌、悪玉菌、比較菌に特異的な群特異的プライマーと菌群全てに共通なユニバーサルプライマーを作製し、菌群特異的かつ菌数に依存する定量的PCR増幅法を新たに開発した。また、善玉菌とその比較菌のPCR増幅産物と、悪玉菌とその比較菌のPCR増幅産物とを試料として、蛍光標識ユニバーサルプライマーで非対称増幅させる方法を考案し、新たに設計した固相化プローブを用いてSSTEC分析を行った。その結果、SSTECパターンのピーク位置とピーク高さ(面積)の解析から、善玉菌、悪玉菌、比較菌が明確に区別できることが判明し、善玉菌と悪玉菌のピーク高さの比から腸年齢を推定する方法が確立できた。次に、1種のプライマーで腸内の約80%のバクテロイデス門の菌群を特異的に増幅でき、7種のプライマーで約60%のファーミキュート門の菌群を特異的に増幅可能なマルチプレックスPCR法を新たに開発し、蛍光標識増幅産物を試料とするSSTEC分析を行った。その結果、SSTECパターンの解析から、バクテロイデス門とファーミキュート門の菌群を溶出温度(融解温度に相当)の違いで明確に分離できることが判明し、両者のピーク高さの比から肥満の程度を推定するための解析系が確立できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の目的であった腸の健康状態の指標ともなる善玉菌と悪玉菌の比率、肥満や痩せの指標ともなるバクテロイデス門とファーミキュート門の菌群の比率を、独自に開発したマルチプレックスPCR法とこれに引き続くSSTEC解析によって、高精度かつ迅速に分析可能なシステムがほゞ完成した。しかし、悪玉菌や悪玉菌も属するファーミキュート門の細菌群の中には、16SリボソームRNA遺伝子の塩基配列の1から数塩基も変異している株の存在することが見出された。また、ファーミキュート門の細菌は極めて多様性に富み、塩基配列が大きく異なるため、分析対象にできる菌群は未だ60%程度に留まっている。分析に用いるプライマーやプローブの配列については、今後更なる検討が必要と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
種々の年齢、体型、食性など種々の生活習慣をもつ健康状態にあるボランティアから提供された糞便を試料として、個人レベルの腸内フローラ解析を実施し、腸年齢、肥満度、健康度などの健康状態やエージングの指標となる新たな評価基準、健康指標(ヘルスインデックス)などを確立する予定である。 また、プロバイオティクスやプレバイオティクスの観点から、種々の乳酸菌やビフィズス菌が分析可能なSSTEC解析系を新たに構築し、ヨーグルトの投与や食餌などの変化が及ぼす菌群の安定性や健康状態の変化などの関連性についてもを研究を進めたい。 更には、Treg細胞の活性化など腸の免疫能に関与することが知られているクロストリジウム属の数種の菌の存在と消長が分析可能な解析系を新たに構築し、免疫能の観点からも、腸の健康状態を評価したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究経費は、本年度と同様、主として消耗品費と謝金などに限定したものになる予定である。また、糞便等の分析試料の調達や研究成果を発表するための旅費や、特許申請や論文の投稿料などの費用も必要となる。
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