2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650478
|
Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
矢永 誠人 静岡大学, 理学部, 准教授 (10246449)
|
Keywords | 亜鉛欠乏 / コバルト / 銅 |
Research Abstract |
亜鉛欠乏餌を用いてマウスを飼育した場合、すなわち、マウスを亜鉛欠乏状態に陥らせると亜鉛欠乏期間に応じて、骨中の亜鉛濃度が低下していった。このことは、微量元素等を備蓄していると考えられる骨から肝臓、腎臓などといった他の臓器・組織に亜鉛が供給されていることを示していると思われる。しかしながら、すい臓については亜鉛欠乏餌での飼育を開始してから1週間で亜鉛濃度が大きく低下し、それ以降は亜鉛濃度の低下は見られなかった。一方、他の元素について調べてみると分析したすべての臓器および組織でコバルト濃度が上昇していた。そこで、このコバルトが不足した亜鉛の代わりとして機能する可能性があるのではないかと考え、亜鉛欠乏餌の原料にコントロール食に含まれる亜鉛と等モルになるような量のコバルト(塩化コバルト)を添加した飼料および亜鉛やコバルトと同様に2価の陽イオンとなる銅(硫酸銅)を当量添加した比較飼料を調整してマウスの飼育を行った。 1週間および3週間の飼育の後、臓器および組織の摘出を行った。血清については荷電粒子励起X線発光(PIXE)分析法により、また、臓器および組織については機器中性子放射化分析法(INAA)により分析を行った。その結果、食餌中の銅を強化した場合であっても血清あるいは臓器中の銅濃度に変化は認められなかったが、コバルトを強化した場合には通常の亜鉛欠乏餌で飼育した場合に比べて、すべての臓器および組織において桁違いの濃度増加が見られ、亜鉛欠乏時においては、より積極的にコバルトの取り込みが行われることが証明された。 また、食餌中のコバルトを強化した場合には、通常の亜鉛欠乏餌あるいは亜鉛欠乏餌に銅を添加した飼料で飼育したマウスと比較して、すい臓中の亜鉛濃度が有意に上昇していた。このことは、亜鉛欠乏状態からの回復にコバルトが何らかの役割を果たしていることを示しているものと考えられた。
|
Research Products
(3 results)