2013 Fiscal Year Research-status Report
Wntシグナル伝達経路を介する食品因子による脂肪細胞の分化制御
Project/Area Number |
23650487
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
金 東浩 大阪市立大学, 大学院生活科学研究科, 准教授 (70326271)
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Keywords | 食と栄養 / 食品因子 / Wntシグナル / リポタンパク質 / 受容体 |
Research Abstract |
メタボリック症候群の発症原因の根幹をなす肥満を抑制することは、現代栄養科学に課せられた急務の研究課題である。食品因子によって肥満を抑制するには、肥満を形成する脂肪細胞の分化機構解明が必要である。近年、Wntシグナル伝達経路は脂肪分化に関与することが示されており、間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化を抑制するWntシグナル伝達経路を制御できれば、メタボリック症候群の成因である肥満発症を抑制できると考えられる。また、Wntシグナル伝達経路は、リポタンパク質受容体(LRP)によって調節されることが報告されている。平成23年度には、LRP6とLRP10のcDNAを間葉系幹細胞であるST2細胞に導入することにより、LRP6やLRP10の過剰発現系細胞を確立し、LRP6はWntシグナル正にLRP10は負に調節することを明らかにした。また、LRP6はWntによる脂肪細胞への分化抑制作用を亢進させたが、LRP10はWntシグナル伝達経路を抑制したにも関わらず、脂肪細胞への分化に影響を与えなかった。以上の結果はWntシグナル伝達経路を介する間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化は、現在まで知られている調節機構よりも複雑な分子機構が関与することが示唆された。そこで、私は間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化にLRP6とLRP10以外のリポタンパク質受容体が関与すると考え、平成24年度には、LRP6とLRP10以外のリポタンパク質受容体である、LDLR、VLDLR、ApoER2、LRP3、LRP4のcDNAを動物細胞発現ベクターへ挿入した組換え体を作製し、間葉系幹細胞であるST2細胞に導入することにより、種々のリポタンパク質受容体の過剰発現系細胞を確立した。平成25年度には、各種リポタンパク質受容体を過剰発現する細胞を用いて、間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化における種々のリポタンパク質受容体の影響を検討した後、Wntシグナル伝達経路の活性を制御する食品因子の探索を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
リポタンパク質受容体は、Wntシグナル伝達経路を正と負に調節することが明らかになった。例えば、LRP6はWntシグナル伝達経路を亢進させ、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化を抑制した。しかし、LRP10はWntシグナル伝達経路を抑制したにも関わらず、脂肪細胞への分化に影響を与えなかった。以上の結果より、間葉系幹細胞の脂肪細胞への分化には、Wntシグナルやリポタンパク質受容体を介する未知の分子機構が関与することが示唆された。私は、未知の分子機構を解明するために、種々のリポタンパク質受容体を過剰発現する間葉系幹細胞を作製した。これらの過剰発現細胞を用いて、間葉系幹細胞から脂肪細胞への分化における種々リポタンパク質受容体の影響を解析し、未知の分子機構を解明とこれらの分子機構を調節する食品因子の探索も同時に行った。実験の量と質が最初の計画より大幅に増えたため遅れることとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
同定した食品因子が如何なる分子機構で脂肪細胞への分化を制御するかを遺伝子チップやプロテインチップ解析により検討を行う予定である。平成26年度に、プロテインチップ解析とWntシグナル伝達経路に関わる分子間相互作用について検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度に、同定した食品因子が如何なる分子機構で脂肪細胞への分化を制御するかを遺伝子チップやプロテインチップ解析により検討する予定であった。しかし、現在、候補となるプロテインを選別中であり、計画を延長し平成26年度に解析を行うこととしたため、未使用額が生じた。 平成26年度に、プロテインチップ解析とWntシグナル伝達経路に関わる分子間相互作用を明らかにする解析を行うことし、未使用額はその経費に充てることとしたい。
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