2012 Fiscal Year Annual Research Report
時間栄養学による記憶学習能力の解析と認知症対策への基礎的研究
Project/Area Number |
23650490
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Research Institution | Kagawa Nutrition University |
Principal Investigator |
堀江 修一 女子栄養大学, 栄養学部, 教授 (60157063)
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Keywords | 記憶学習能力 / 高脂肪食 / 時計遺伝子 / 脳機能 / 時間栄養学 / 制限給餌 / 認知症 / 野菜摂取 |
Research Abstract |
平成24年度では、以下の1)~3)の実験を行い、それぞれの成果を得た。 1)前年度に検討したマウスの記憶学習能力を調べる最適条件下で、電流刺激回避測定装置を用いて実験した結果、牛脂に富んだ高脂肪食を摂取したマウスの能力に性差が存在すること、特に雌マウスにおける記憶学習能力の低下が顕著であることが判明した。この性差による違いは水迷路装置を用いて行った空間認識記憶実験においても認められたが、電流刺激回避測定の結果と比較すると小さな違いだった。 2)各組織における関連遺伝子の相互作用への影響を解析するために、それぞれの飼育条件下にあるマウスから血液と脳、肝臓を採取し、脂質代謝系遺伝子と時計遺伝子や転写因子の発現変動について調べた。その結果、肝臓中のclockやper2で検討した時計遺伝子の発現リズムは、高脂肪食摂取後に移相のずれが認められた。しかし、このとき性差による有意な差は認められなかった。一方、脳におけるニュートロフィンやその受容体の遺伝子、グルタミン酸受容体関連遺伝子の発現では、NGFBやBDNF、NTFに大きな変化はなく、NMDA-2AとKIF17-1の発現に食組成と性差による違がみられた。また、本来の餌摂取時刻ではない明期(マウスの休息期)にのみ餌を与えたところ、高脂肪食摂取群でKIF17-1発現が増加していた。 3)長期に渡って高脂肪食摂取させたマウスを用いて、加齢による記憶学習能力への影響を調べた結果、普通食摂取マウスと比較して高脂肪食をほぼ1年間自由に摂食させ続けたC3H系マウスにおいて明らかに記憶学習能力が低下した。野菜を中心とする抗酸化活性を有する食材をマウスに与えて調べる実験は現在検討中であるが、4週間程度の摂食期間では明らかな効果がなかった。 以上のように、本研究によって人の認知症への応用が可能と考えられる食生活のあり方に関する基礎的なデータが得られた。
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