2011 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー吸収効率の個人差を簡便に測定する検査キットの開発
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23650493
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Research Institution | The University of Shimane Junior College |
Principal Investigator |
直良 博之 島根県立大学短期大学部, 健康栄養学科, 准教授 (70222156)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | エネルギー吸収効率 |
Research Abstract |
当初の研究計画に従い,人工消化基質の組成の検討,in vitroよびin vivoにおける基質の消化度の検討を行った。消化基質はホエイタンパクを改変したジェネシス(第一化成)をベースとして作成し,その消化度を調節することを目的として消化酵素阻害剤であるダイズトリプシンインヒビターおよびリパーゼインヒビターを添加した。それらの消化基質をin vitroでは膵臓性消化酵素剤ベリチーム(シオノギ製薬)にて消化したところ,インヒビターの添加量に対応した消化抑制効果が認められた。in vivo実験においては,マウスおよびラットを用いた予備実験の結果,消化管内の観察が容易なラットを用いることにした。インヒビターを種々の条件にて添加した消化基質をラットに摂食させ,その後消化管を摘出し,消化管における消化基質の消化度を測定した。トリプシンインヒビターを添加した基質は胃においては消化度に差がなかったが十二指腸において約30%程度の消化阻害効果が認められた。しかし空腸・回腸においてはいずれも消化度に差が認められず,結腸においては消化基質を確認することができなかった。リパーゼインヒビターを添加した消化基質は胃,十二指腸,空・回腸においていずれも50%~20%の消化抑制効果が認められたが,糞便中に消化基質を確認することはできなかった。 一方,ラットのエサにトリプシンインヒビターおよびリパーゼインヒビターを添加することによりエサそのもののエネルギー吸収効率を調節した。エサおよび対応する糞便をボンベ式熱量計で計測し,エネルギー吸収効率を求めたところインヒビターを種々の組み合わせで添加することによりエネルギー吸収効率を87%~74%の間で調節することができた。エサのエネルギー吸収効率を調節する際には食用油の添加とリパーゼインヒビターの組み合わせが重要であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画では実験動物を用い,糞便中に排泄された消化基質の消化度と,ボンベ式熱量計で計測したエネルギー吸収効率との間で回帰式を得ることを目標としていた。その手段としての消化酵素インヒビターによる消化度調節については一定の実験結果を得ることができたが,消化基質を糞便中に確認することができなかった。これは,ラットが消化基質を咀嚼することによる基質の断片化が主な原因と考える。消化管内の消化基質の大きさとエネルギー吸収効率との間で回帰式を得ることも可能ではあるが,現在は消化基質の,ラットへの投与方法を改善することを検討している。ボンベ式熱量計を用いた計測はすでに実験結果を得ることができているが,回帰式をいまだに得られていなため,研究の達成度は「やや遅れている」と評価した。 またリパーゼインヒビターについては,当初予定していた小麦由来リパーゼインヒビターが,消化基質のゲル化の際,加熱により失活していることが示唆されたため,別のリパーゼインヒビターであるオルリスタット(sigma)を用いた。オルリスタット添加は,消化基質の消化度を添加量に応じて阻害した。しかしオルリスタットは米国では医薬品として用いられているが日本では認可されておらずヒトでの実験には使用することができないため,更なる検討を必要としている。
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Strategy for Future Research Activity |
ラットを用いた実験において,消化基質を一定の形と大きさを保ったまま摂食させるため,胃ゾンデを用いた投与を試みる。専用のゾンデを作成し,直径2mm程度の大きさを保った消化基質を胃に直接注入することにより糞便中に消化基質が残存する条件を決定する。排泄された消化基質の大きさを計測することにより,ボンベ式熱量計で測定したエネルギー吸収効率との間で回帰式を得る。それに加え,基質をゲル化させる際の塩濃度を調節することでゲル強度そのものを上げ,消化度を抑制する条件を検討する。 これら動物実験の結果に基づき,ヒトにおいて,消化基質の摂取および糞便中での消化度およびボンベ式熱量計によって得たエネルギー吸収効率の間での回帰式を得る。そしてヒトにおける,簡便なエネルギー吸収効率の測定方法の基礎データを得る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
引き続き動物実験のため,ラットおよびその飼育に関わる消耗品,また糞便を確実に回収するため,ラット用の代謝ケージを2台購入する。人工消化基質の作成のためのホエイタンパク,消化酵素の阻害剤に加え,ゲル化の際に必要となるチューブなどの消耗品を購入する。 ボンベ式熱量計による測定には,島根県産業技術センターの機器を利用するが,その際の消耗品および使用料を支払う必要がある。 ヒトのエネルギー吸収効率測定に当たっては,糞便の処理に必要な薬品類,レトルトパウチなどの消耗品に加え,標準食として摂取するための食品類の購入および被験者への謝金が必要となる。
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