2011 Fiscal Year Research-status Report
DNAバーコーディング法を応用した外来アリの簡易検出法の開発と環境教育への応用
Project/Area Number |
23650494
|
Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
村上 貴弘 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (40374706)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮田 弘樹 株式会社竹中工務店 技術研究所, その他部局等, 研究員 (90416628)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | DNAバーコーディング / 簡易PCR機器 / 環境教育 / アリ類 / 外来種 / モニタリング / バイオロギング / 多様性 |
Research Abstract |
今年度、当該研究課題において、研究代表者である村上貴弘は、4月から12月にかけて北海道、東北、中国、四国、九州・沖縄、アルゼンチンでアリ類の採集を行い、研究協力者の宮田弘樹氏は関東周辺でアリ類の採集を行い、約80種、5,000個体の標本を得ることができた。それらの標本のうち、20種250個体のDNAを抽出し、CAP-PCR DNA fingerprinting法で種、地域特異的なバンドパターンの検出を行い、成功した。また、それらのデータをデータベース化し、教育教材として活用できるものにした。これらの成果の一部は第53回日本生態学会で発表するとともに、2月28日に北海道教育大学函館校附属中学校にて授業実践を行った。 本研究のもう1つの目的として、簡易PCR機器の開発がある。当該年度は、3つのウォーターバスを組み合わせPCRの原理をできる限りシンプルにしたモデル系で実験を行い、十分PCR産物が得られることを確認した。また、宮田弘樹氏により簡易PCR機器のデモ機の作成を行った。これは、3つのウォーターバスを直列に配置し、その上をDNAサンプルが一定の時間間隔で移動するというもので、原材料費は約10万円と市販されている最安値のサーマルサイクラーの約3分の1と当初の目的と合致するデモ機となった。 また、アリ類の移動分散の実態を把握し、環境教育に応用するためにその動態をモニタリングすることを目的にバイオロギング技術を応用することにも成功した。沖縄産のDiacamma(トゲオオハリアリ)を題材に体表に極小のマイクロチップを装着し、巣の出入りを自動でモニタリングした。その結果、連続100時間を超える観察が可能になった。これらの研究実績は今後、環境教育への応用の際に非常に重要なデータとなる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では1年目は教材となるアリ類の採集、およびそのDNA解析データをデータベース化することに主眼をおいていたが、それに加え、簡易PCR機器の開発でも大きな進展が見られた。当初の計画では簡易PCR機器の設計図を作成するところを目的としていたが、年度末にデモ機の製造まで終了した。今後はこの機器を使ってデータ収集を行っていく。研究成果の還元という点でも、実際に教育現場での実践を行えたことから、当初の計画よりも進展は早いものと判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず第一点として継続して各地からのアリ標本の収集を行い、そこからのDNA解析、結果のデータベース化を行う。それらのデータベースは公表し、より多くの教育関係者が利用できる形にする。第二点は、簡易PCR機器のデモ版が完成したので、実際にPCRを行い、どの程度の正確さでPCRが行えるのかを検証するとともに、この機器を使ったデータ収集を行っていく。この二点を完結させた段階で、協力者である高等学校教諭と連携して、実験講座等を行い、教育実践の活動の幅を拡大する。また、成果の公表としては、7月に行われる第3回教育に関する環太平洋国際会議等での発表、および専門誌への論文の投稿を目指す。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
アリ類採集のための国内、国外旅費、および簡易PCR機器の開発および改良のために次年度は研究費を使用する予定である。
|