2011 Fiscal Year Research-status Report
内部観測にもとづくゲーミング・シミュレーションでの役割体験の評価に関する研究
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23650496
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
木谷 忍 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20169866)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 内部観測 / 役割演技 / ゲーミング |
Research Abstract |
内部観測の理論整理について,数学的形式化については連携研究者の兼田と,実践的なゲーミングでの当てはめや評価の方法論については井門と検討し,おおまかな評価枠組みを構築した.前者では,不連続な過程を扱うために代数学的理論が有効であった.また後者では,ゲーミングの実例にもとづく発言内容や質問紙調査では捉えきれない情報をどう扱うかを問題として取り上げた. さらに,役割演技をするプレイヤーにとって「予想外」の出来事について,彼らの態度変容を,オースティンの発語内行為論から計量する方法を考案した.それによって異文化理解ゲーミングのRafaRafaやBafaBafaについて評価を試み,異文化に対する思考実験では得られない予想外の出来事を見出し,内部観測による評価の必要性を確認した. 次年度でのゲーミング実験に備え,都市郊外の地域農業を持続的なものにするための地域づくりについて,山形市南部を選定し,地域農業者の属性,地域コミュニティ,圃場の整備状況などの調査を行い,外部者による提案型ゲーミングの設計を終えた. 研究報告は,日本環境共生学会,日本シミュレーション&ゲーミング学会,および日本計画行政学会の各全国大会で報告した.内部観測の理論的説明に少し苦労したが,ゲーミング結果の記述ではなく,プレイヤーの行為過程を評価するものとして概ね好評であった.研究途中において,役割演技ゲーミングは,サイコドラマのような心理療法目的や教育目的のものだけではなく,音楽演奏ゲーミングといったフロー経験も考慮に入れる必要があることを認識し,この点に関してゲーミングの評価の有効性への可能性について検討する必要に迫られた.ここでは役割とは何か,さらに役割演技の概念を捉えなおす必要が出てきた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最初に大震災の影響で想定外の新学期の雑務が生じ,研究環境の回復に時間を要したため,研究の開始が初夏にずれ込んだことで3ヶ月程度の遅れが出ている.また,役割演技ゲーミングにおける「予想外」の出来事を捉える際に,プレイヤーの役割とは何かを自らどのように認識しているのか,無意識なのか,あるいは役割を持たないと考えるべきなのかについて,社会学的な観点以外から捉えなおすという,新たな課題が生まれた.内部観測の観点では,プレイヤーの役割認識の様式は大変重要である.現在では,若干の遅れに留まっているが,研究費が基金化された恩恵を受け順調に終了できるものと確信している.
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Strategy for Future Research Activity |
役割とは何か,さらに役割演技の概念を捉えなおすには,これまで社会学的研究とされた"役割"の概念をその内面から捉えようとするマドベイチェクの生態学的妥当性が参考になる. 次年度のゲーミングの題材として,パーソナルブランディングという現代の情報社会の人々の振る舞いに着目して討論システムによるゲーミングの設計を行い,内部観測の観点からの評価枠組みを精緻化する.役割演技を内部観測から分析するのに好都合の題材と考えている.また,発語内行為を,情報のやりとり,意思や意見表明,相手への応答,議論の支配,感情表出という分類軸を作成して実際に評価を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
この研究を始める直前に東日本大震災が起きたが,このような災害後の人々の内面的な態度変容と実際の災害ゲーミング実験での態度変容の比較を,前者は調査による研究によって試みる.(調査分析補助、学会報告のための旅費) パーソナルブランディング実験を,現代のネット社会を実験室で実現して実施し,ネットでの発言を発語内行為として追う.(実験参加者への謝金、会場費、学会報告のための旅費) 農業地域づくりでのゲーミングは山形市で行う.会場費,調査のための人件費,参加者への謝金,学会報告のための旅費) 研究報告については,まず地域環境学関係の国際学会に参加する.東日本大震災を一つの擬似的なゲーミングとみなしたときの内部観測的な観点からの評価,パーソナルブランディング実験の結果報告,および農業地域づくりでの気づきを促す実験結果である.
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Research Products
(7 results)