2011 Fiscal Year Research-status Report
分野特性に配慮した研究倫理の大学院レベル・コースの開発
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23650498
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小林 信一 筑波大学, ビジネスサイエンス系, 教授 (90186742)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 芳子 名古屋大学, 高等教育研究センター, 助教 (90344077)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 研究倫理 / 責任ある研究 / 科学教育 / 大学院教育 |
Research Abstract |
大学院教育では専門的知識・能力の修得に加え、研究構築力や研究倫理を含む倫理観の修得が焦点となりつつあることを背景として、本課題は、日本の実情に適合的で、分野別の特性にも配慮した研究倫理の大学院レベル教育コースを開発することを目的とする。 平成23年度においては、実施計画のうち、a)国内の大学・研究機関の研究倫理教育事例調査については、大学等の研究倫理教育の実践例とその成果に関する情報の収集に着手した。b)海外の事例調査に関しては、米国大学院協議会(CGS)が2004年から2011年にかけて実施した研究倫理に関するプロジェクトに関して情報を入手するとともに、参加機関の一つであるアリゾナ州立大学(ASU)でその後の展開について実地調査を行った。あわせて、近年、米国では大学院生や公的研究資金を獲得した研究者に対して研究倫理の教育が義務づけられているが、そのルールに対応して、現場でどのような取組みが行われているか等についても、ASUその他の大学で聞取り調査を実施した。CGSは米国大学院教育におけるグッドプラクティスを収集、整理中であることが判明したほか、大学院における副専攻教育として位置づけている事例などを収集できた。 c)学会単位のガイドライン等の調査については、文系を含む全分野の主要学会から、約880学協会について倫理規定や研究不正に関する規定の存在を確認し、関連情報を収集するとともに、d)安全規制等の公的ガイドライン、法的規制等についても収集を行った。一連の調査によって国際的規定を採用・援用している学会等もあり、多様性があることが判明した。 e)教育内容(教材、カリキュラム等)の開発に関しては、申請者らが手がけている分野共通的な研究倫理教育の教育内容をベースにし、教育内容の分析、授業分析等に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画のうち、a)国内の大学・研究機関の研究倫理教育事例調査については、大学等の研究倫理教育の実践例の探索と内容の収集が予想以上に困難であり、十分には進んでいない。ただし、この原因が、探索が不十分であったことにあるとは必ずしも言えない。本研究開始後に、研究代表者に対して、教授会の場で研究倫理に関して講演して欲しい旨の依頼が他大学からあったほか、講義の依頼が届くようになった。このことからも、大学院レベルの教育、教員のFD等として十分に定着していない可能性が推測できる。一層探索することと併せて、導入が進んでいない可能性についての解明が課題として登場してきた。 一方で、b)海外の事例調査に関しては、関係者の協力により、全米的な取組みや制度的要請への対応等、予想以上に有益な情報を収集することができた。CGSが2012年夏にグッドプラクティスの公開を予定していることから、今後一層の進展があると期待できる。c)学会単位のガイドライン等の調査は、予想以上に順調にデータ収集ができ、基本的な情報はほぼすべて収集でき、詳細な分析に着手している。d)安全規制等の公的ガイドライン、法的規制等の調査についても予定通り情報収集が進んでいる。e)教育内容の開発についても予定どおり進んでいる。 以上のように、一部は量的、質的両面で、予定以上の成果を上げている。全体としても、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
実施計画のうち、a)国内の大学・研究機関の研究倫理教育事例調査については、さらに深く情報収集を進める。十分な事例が集まらない場合は、その原因を考察する。 これ以外の項目については、予定通り研究を進める。とくに、初年度は情報収集か主たる活動であったので、収集した情報、今後収集予定の情報を整理、分析し、研究倫理教育への適用可能性等を評価・検討する。 また、e)教育内容(教材、カリキュラム等)の開発に関しては、分野共通的な研究倫理教育の教育内容をベースにしつつ、分野特性に応じた教材開発等に着手し、あわせて既存の大学院研究倫理科目や、外部から依頼されてる講義等の中で、研究倫理教育を試行し、妥当性の評価を行い、開発にフィードバックする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内の大学等の研究倫理教育の実践例の収集が予想以上に困難であったため、国内実地調査が計画通りに進められなかったことから、国内旅費を中心に予定していた経費の支出が十分には行われなかった面がある。今後も探索を進め、実地調査に値する国内事例を発掘し、調査を行う。ただし、上述のように、十分な事例が見いだせない可能性も残る。一方では、期待していた以上の米国大学の事例が入手可能になると期待されるので、米国の事例の一層の収集により、情報を補うことも想定する。 平成24年度は、基本的には予定どおり研究を進めるが、米国事例や学協会の倫理規定等が予想以上に多数収集できたため、データ整理のためのアルバイト謝金が当初予定以上に必要になる可能性も出てきている。「次年度使用額」の一部はこれに充てる。
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Research Products
(2 results)