2011 Fiscal Year Research-status Report
大学の知の社会還元を見据えた大学の秘密情報保護施策構築と国際標準への取組
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23650501
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
飯田 香緒里 東京医科歯科大学, 研究・産学連携推進機構, 准教授 (90570755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石埜 正穂 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30232325)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 営業秘密 / 不正競争防止法 / 秘密保持契約書 / 産学連携学 / 大学の知 / イノベーション創出 / トレードシークレット |
Research Abstract |
大学から創出される研究成果等の有用情報について秘密管理を行うことの必要性や妥当性については、ほとんど顧みられていない。本研究は、大学が有する論文・学会発表前、又は権利化(特許出願)前の研究成果を秘密情報と位置付け、その保護の方法、体制構築に向けた取り組みである。すなわち、従来の不正競争防止法による保護を見直し、大学のオープン性を考慮した新しい枠組みによって保護活用しようという試みである。平成23年度の研究としては、秘密管理の必要性とその在り方についての検証を行った。秘密管理の必要性については、医学系大学産学連携ネットワークの枠組みを活用し我が国の大学における情報の取扱いを巡るトラブル事例を収集した。また昨今大学が訴えられる事案が増加している米国の大学の状況を把握するため、ハーバード大学やスタンフォード大学の事案等の検証を行った。秘密管理の在り方については、情報のコンタミネーション問題が深刻な経営危機を招く企業における秘密管理体制の把握につとめたほか、米国の大学や欧州の公的研究機関である、INSERN Transfert、パスツール研究所、VIB headquarters 、欧州委員会研究イノベーション総局に調査を行った。当該年度の研究を通じて、大学発の貴重な研究成果を保護し、活用をすることでイノベーションを創出していくためには、大学においても情報管理は必要であることが確認できた。また、その在り方については、大学という組織の特殊性を踏まえた適切な情報管理体制製整備を急ぐ必要があることが明らかになっている。今後欧米の大学の状況等の検証を重ね、我が国大学等研究機関における情報管理の在り方の提言を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度は、我が国大学における営業秘密の管理の必要性についての検証を行うために、(1)本邦及び米国の営業秘密に関する法令、(2)日米大学における営業秘密の取扱いを巡るトラブル事例について検証を行った。(1)については、我が国の不正競争防止法、外為法、米国経済スパイ法、米国武器輸出管理法、米国不法行為法及び契約法についての検討を行った。(2)については、先ず日本については、行政と産業界、3大学、弁護士、監査法人等の有識者で構成される、医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)のライセンス管理ワーキングにおいてトラブル事例を検証した。また米国の事例については、ハーバード大学事件やカリフォルニア大学事件の検証を行った。その結果、産学連携活動が増加傾向にある我が国の大学等アカデミアにおいて、営業秘密の管理の必要性は増していることが検証できた。また、当該年度は大学における情報の管理の在り方を模索するため、(1)企業における情報の管理手法、(2)米国大学における営業秘密を巡る事例を行った。その結果、産業界と異なり、自由闊達な研究現場である大学において、企業と同等の管理体制を導入する必要はないが、一定の指針となるルールや基準、啓発体制を構築することは必要であることが確認できた。以上より、大学における営業秘密の管理の在り方を平成24年度に提言するに向けた基礎情報を収集できたとの考えで、本研究は順調に進展しているものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、平成23年度に収集した情報・知見について、医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)の産学官協働によるライセンス管理ワーキングにおいて検証を重ねる。また、東京医科歯科大学、札幌医科大学・金沢医科大学・秋田大学・長崎大学・信州大学・聖マリアンナ大学・奈良県立医科大学・滋賀医科大学・東京女子医科大学・浜松医科大学の11大学との産学連携実務者との勉強会において、大学等アカデミアにおける営業秘密に関する在り方の検討を行った上で、我が国のモデルとなるルール(規則)や秘密保持契約書の雛形案、啓発体制案、研究者が理解できるハンドブック等の策定を目指す。なお、それら内容については、営業秘密の取扱いに精通した専門家(弁護士等)や、経済産業省の知的財産政策室と意見交換を行うことで、最適な方策提言を追及する。総括としては、日本知的財産学会での発表や、論文への投稿を行う。またmedU-netの勉強会等では、営業秘密の取扱いに精通した専門家(弁護士等)を招いたワークショップを開催し、本調査結果の報告を行う方針である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、欧米アカデミアの管理体制の具体的な在り方を把握するために、欧米の大学等が集合するAUTM(大学技術移転機関マネージャー会議)や先進的な大学にヒアリング調査を行うために、研究費を使用する。本調査を通じて、策定する予定のルールや秘密保持契約書の雛形、啓発体制班、ハンドブック等についての精査を行うための文献調査、書籍購入のために研究費を使用する他、弁護士等の専門家から意見聴取するための費用として、研究費を使用する予定である。本研究の総括として学会発表やセミナーの開催を予定していることから、当該学会参加費及びセミナーへの講師招聘旅費・謝金の支払いのために、研究費を使用する。
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