2012 Fiscal Year Research-status Report
大学の知の社会還元を見据えた大学の秘密情報保護施策構築と国際標準への取組
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23650501
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
飯田 香緒里 東京医科歯科大学, 研究・産学連携推進機構, 准教授 (90570755)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石埜 正穂 札幌医科大学, 医学部, 教授 (30232325)
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Keywords | 営業秘密 / 不正競争防止法 / 産学連携 / 技術流出 / 知的財産 |
Research Abstract |
産学連携活動の増加に伴い、大学にも適切な情報管理が求められている。例えば共同研究において、大学に提供される相手先企業の営業秘密の管理は当然のこととして認識される。ところが、大学から創出される研究成果等の有用情報について秘密管理を行うことの必要性や妥当性については、ほとんど顧みられていない。過度の秘密管理は大学の教育研究活動の弊害となり、研究成果等の有用情報の扱いにおいて、一般的な秘密管理性の要件を満たすことが困難である。一方で、必要な秘密管理性が充たされていないと、相手先企業は無制限にこれを使用できてしまう。本研究は、健全な産学連携活動の担保によって大学の知が社会で利用されやすい環境の整備に資するべく、大学の組織理念に配慮した情報の保護・管理の新たな枠組について検討を行った。 大学における秘密情報について、「営業秘密」として管理することの必要性と妥当性を考慮しつつ、新たな枠組みで保護手法の構築を目指した。具体的には、各国の法令と裁判例の検討、海外の大学・研究機関等の秘密情報に関する体制整備状況について検証を行った。すなわち、大学の営業秘密については、秘密管理性の要件を緩和している海外のケース等を探索し検証し、産業界とは異なる性質の大学が講じるべき秘密管理体制について提案を行う。グローバルな産学連携活動が活発化していることからも、国際社会の合意が得られる大学秘密情報の管理体制の構築を目指すために、海外の事例等について、米国の大学を中心に調査を行った。 当該調査の結果については、日本知的財産学会年次総会で学会発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、大学の有する秘密情報の保護・管理手法を検証するため、次の5つの構成で進める計画をした。 ① 大学の有する秘密情報が不正競争防止法による保護とは異なる手法で保護される可能性を検証する目的で、営業秘密に関する各国の法制度・判例の研究を行った。特に大学に対する特例措置の存在の有無を中心に調査を実施した。 ②各国の大学が講じている、秘密情報の取扱いに関する具体的措置(学内ルールや契約方針等)についての整備状況を調査し、当該国における①との関連性を検証した。海外大学における秘密情報に関する物的管理(セキュリティシステム等)、人的管理(大学が外部から研究者を受け入れる場合の対策、そして組織的管理(ポリシーの策定や契約方針等)について、調査し検証した。本研究において保護強化の対象と考えているのは、そうした契約下になく、徹底した秘密管理が馴染まない大学という組織の特殊性から、産学連携活動の過程で、外部の産学連携関係者が大学内で偶然に知り得た情報についてである。具体的には、各国の大学・研究機関が準備している契約書雛形含めた具体的措置について、それらが実際必要とされた事案含めて、調査し分析した。 ③ ①②の研究状況・成果の総評を得るために、専門家や産学連携関係者を集めたセミナーや意見交換会を開催し、研究内容の妥当性を追求した。 上記の活動を経て、保護手法の暫定案を策定できた。
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Strategy for Future Research Activity |
大学が有する秘密情報の保護・管理の新たな手法を策定(最終化)する。具体的には、大学が有する有用情報のうち、大学という組織の性質上、「営業秘密」としての保護対象に適さない情報について、各国法令並びに判例等の根拠を用いて、新たな保護及び管理手法を策定する。大学における秘密情報の保護のための新たな手法の運用について、国際研究社会での合意が得られるか、国内外の社会に順応される内容であるかについても慎重に検証を行う。そのために、国内外の産学連携に取り組む団体(日本知的財産協会/大学技術移転協議会/医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)/AUTM:米国大学技術移転マネージャー協議会/LESI:ライセンス協会等)と協議を行うことでブラッシュアップにつとめる他、各種学会へ発表し総評を得ることで、国際標準化を目指す。大学が有する秘密情報の新たな保護・管理手法の構築について最適なモデルの構築を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
旅費としての使用 本研究を通じて構築する新たな保護及び管理手法案を最終化するために、研究分担者・研究協力者と協議を重ねる他、国内外の産学連携に取り組む団体(日本知的財産協会/大学技術移転協議会/医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)/AUTM:米国大学技術移転マネージャー協議会/LESI:ライセンス協会等)と協議を行うための会合参加費 講師謝金としての使用 有識者を招いた勉強会の際の講師への謝金に使用する
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Research Products
(1 results)