2011 Fiscal Year Research-status Report
東アジア気候環境の成り立ちと多彩な季節感を軸とするESD学習プラン開発の学際研究
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23650510
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
加藤 内藏進 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90191981)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10510745)
加藤 晴子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (10454290)
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40211693)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 東アジア気候系 / ESD学習プラン / 季節感を軸とする学際研究 / 総合地球環境教育 / 地学と芸術教育の連携 |
Research Abstract |
本研究は,『東アジア気候系』について,『気候環境の成り立ちと大陸形成史』,『独特な季節サイクルが醸し出す多彩な季節感』の絡みを軸に,総合地学教育や文化理解教育(音楽,詩歌,美術などとの教科横断的学習)自体へも貢献するような,ESD学習プランの開発を目的とする。 本年度は,特に季節感との絡みでは,日本の気候系の本質を知る切り口となる『季節の変わり目』を視点の中心に据えた。まず,11月頃の日本付近では,シベリア気団とシベリア高気圧双方の成長に伴い,気温がまだ高いのに冬の天気パターンに移行する面白さや,季節風下での驟雨性である『時雨』に関連した気象状況の表現が和歌にも種々見られること,等を体系化した。その上で,前年度に高校で実施した学際的授業(唱歌『早春賦』を軸とした冬から春の気象と音楽,及び,秋から冬の日本海側での『時雨』を軸とした気象と和歌)の分析を行った。また,秋から冬への遷移期について,和歌,音楽,美術との連携による新たな研究授業を中学や大学で行った。その結果,和歌や唱歌の作品のみならず,受講者による唱歌の鑑賞や色紙での四季絵などの創作活動からも,『四季』あるいは『六季』の枠だけでは表現しきれない微妙な季節感の違いが表現できていること,また,個別的な気象要素だけでなく『卓越する気象・気候過程全体の特徴』を反映した季節感に注目することの重要性が分かり,ESD教材化への足掛かりを得た。 一方,東アジアの地形・地質発達史について解析を行った。特に,白亜紀の海洋プレートの斜み沈み込みによる,東アジア東岸地域の地質体の断裂および北上現象について検討した。古地磁気学的なデータから,現在の日本列島を構成するジュラ紀付加体の一部は,後期白亜紀当時には赤道付近に位置していたことが明らかとなった。そのような知見も含む日本の気候・地質総合環境に関して,大学の文系学生向けの授業構築も試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H23年度には,(A):東アジアの大陸や地形の形成史の新たな調査も含めた既存の知見の再体系化への整理とその総合地学教育としての教材化の検討,(B):日本付近の季節サイクルの中で,特に『季節の変わり目』(例えば,晩秋から冬,冬から春への『中間の季節』など)に注目した気象学的知見の再体系化へ向けた整理(新たな解析も必要に応じて追加しながら)及び,音楽(特に歌),詩歌,絵画等に見られる季節感の表現の分析と,それらを踏まえた学際的な教材開発(ESD教材への繋がりを念頭に),(C):(A),(B)の教材化が進んだ内容の中から授業実践を試行し,その結果の分析を行い,次年度で更に進めるべき内容について総括するという計画で研究を進めた。 研究実績の概要で述べたように,(A),(B)のそれぞれの内容に関して,具体的に教材化を念頭に置いた知見の体系化を計画に沿って進めており,特に,東アジアの中での南アジアや日本列島の位置づけ,秋から冬への季節の遷移期に見られる独特な気象と芸術表現など,ESD教材へ活用するうえで有効な「様々な過程等の絡み」,「気候環境と音楽,和歌,絵画や色の表現のような文化的側面との繋がり」をクローズアップすることにある程度成功している。また,それらを視点の中心に据えた授業実践も,前年度の予備的授業実践も踏まえて,新たに複数コマ行い,おおむね順調に分析や更なる進展への指針が見えてきている。 H23年度は初年度でもあり,まずは,教科や教科横断的学習自体の面白さが伝わることを前面に出した授業開発に取り組んだ。まさにそれが,上述の視点でのESD教材を銘打ったものへの足掛かりとなり得るからである。更に,以上の成果の一部は,論文や口頭発表も行った(H24年4月のウィーンでの発表も含む)。従って,研究目標の現段階での達成度は,ほぼ「計画通り」と考える。
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Strategy for Future Research Activity |
H24年度には,必要に応じて更なる現地調査も行いながら,平成23年度の各課題を更に継続発展させる。交付申請書の「研究目的」に記載した(A)~(C)の課題(「現在までの達成度」で要約して再記載)について,(A)に関しては細かいステップでの季節遷移との絡み,(B)に関しては種々の『中間の季節』自体についての気象学的内容の深い理解や季節感との関連,等をより強く意識して研究を進め,より適切で挑戦的なESD教材にするための『知の統合』へと深化させる。 それらを踏まえて,『ESD教材・学習プラン集』(試行版)を印刷し,関連研究者や学校現場に配布してご意見を頂くとともに,幾つかの学習プランについては,小中高の学校現場,大学での中学理科や小学校の教員養成用の担当授業で実践し,より系統的に成果や問題点を分析する。 以上の中間成果の論文発表や口頭発表を国内外の学会で行い,残された課題を総括する。 また,最終年度のH25年度には,H24年度までの成果や様々な問題点を踏まえて,内容や方法論の更なる改善を図りながら課題(A)~(C)を発展的に継続する。これらを通して本研究の最終成果を取りまとめ,研究成果報告書,学会口頭発表,論文等で発表するとともに,『東アジアの気候環境の成り立ち』とその季節サイクルが醸し出す『多彩な季節感』を素材として,多面的・総合的な視点を学校現場で育むための『ESD教材・学習プラン集』(最終版)を作成する(印刷等で配布)。これは,通常の研究成果報告書と学習プラン集とを合体させたものにする予定であり,学習プラン集には,児童生徒が使用する教材,及び,指導者のための解説,双方の内容を必要に応じて含むものを想定する予定を考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度に「次年度使用額」が11万円ほど生じた。そこで,それは,H23年度の成果の一部の発表と資料や研究情報の収集を目的とする,H24年4月下旬のウィーンで開催される国際学会への出張のための経費の一部に使用することとした。このことで,本研究計画全体としては最も研究を効率的に進めることになると判断したためである。 このように,次年度は,当初計画にほぼ沿って,研究資料入手(野外調査等も含む)やその分析・知見の再体系化や教材開発・授業実践・分析のための経費(消耗品,旅費な他),成果発表や研究打ち合わせのための旅費,等を中心に,ヨーロッパの国際学会での成果発表や資料・情報収集も含めて,研究経費を使用する予定である。
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Research Products
(15 results)
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[Journal Article] K-Ar ages determined for post-caldera volcanic products from Aso volcano, central Kyushu, Japan2012
Author(s)
Masaya Miyoshi, Hirochika Sumino, Yasuo Miyabuchi, Taro Shinmura, Yasushi Mori, Toshiaki Hasenaka, Kuniyuki Furukawa, Koji Uno, Keisuke Nagao
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Journal Title
Journal of Volcanology and Geothermal Research
Volume: 229-230巻 (In press)
Pages: 64-73
Peer Reviewed
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