2012 Fiscal Year Research-status Report
東アジア気候環境の成り立ちと多彩な季節感を軸とするESD学習プラン開発の学際研究
Project/Area Number |
23650510
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
加藤 内藏進 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (90191981)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宇野 康司 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (10510745)
加藤 晴子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 准教授 (10454290)
赤木 里香子 岡山大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (40211693)
|
Keywords | 東アジア気候系 / ESD学習プラン / 季節感を軸とする学際研究 / 総合地球環境教育 / 地学と芸術教育の連携 |
Research Abstract |
本研究は,『東アジア気候系』について,『気候環境の成り立ちと大陸形成史』,『独特な季節サイクルが醸し出す多彩な季節感』の絡みを軸に,総合地学教育や文化理解教育(音楽,詩歌,美術等との教科横断的学習)自体へも貢献するようなESD学習プランの開発を目的とする。 H24年度には,東アジア気候環境に関わる日本列島の成り立ちを古地磁気学に調べる基礎として,流紋岩溶岩の自然残留磁化を活用出来る条件を探った結果(日本には広く分布する流紋岩質岩石の,残留磁化の内部構造の複雑さ等があるので),流紋岩溶岩の定置後に常温に冷却する直前に与えられた古地磁気方向が,最も正確に当時の地球磁場を記録していることが分かった。 一方,季節サイクルに関しては,本年度も『季節の変わり目』注目して,ESD教材化への知見の学際的再体系化を行った。例えば,初冬の『時雨』を詠んだ和歌を接点とする前年度の研究授業の分析を国内外で学会発表するとともに,その成果報告書(解説書つき)も作成して近隣の学校現場や関連研究者へ配布した。更に,初冬の解析を進めた結果,(1) 冬型の持続性こそ弱いものの,そのピーク時には日本海からの潜熱が多いだけでなく顕熱も真冬並に増大し,北陸では真冬のドカ雪時に匹敵する降水量になること,(2) 9月から11月にかけての平均場の顕著な寒気域(シベリア気団)の拡大は,その南縁付近での低気圧活動の季節的活発化に関連した日々のシベリア高気圧の一時的強まりや気温変動の増幅という経過を伴うこと,等が分かってきた。一方,暖候期の雨の細かいステップでの季節的変化について,対流性降水と層状性降水の卓越度や組み合わさり方に注目して既存の知見や新たな解析結果を体系化するとともに,そのような『雨』の微妙な違いをも意識して,音楽や美術の作品の鑑賞や表現活動(打楽器や色紙等)と連携した授業開発等を行って結果を分析した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度には, (A)『東アジア気候環境の成り立ちと大陸形成史』に関連した知見の整理(新たな調査等も含む),(B)『独特な季節サイクルを持つ気候環境』に関する知見の再体系や(新たな解析も必要に応じて追加),音楽(特に歌),詩歌,絵画等に見られるその『季節感』の表現の分析,(C)それらを踏まえた学習プランの開発(授業実践とその検討も含む),の各課題をH23年度に引き続き行うとともに,総合地学教育・文化理解教育としての新しい提案性を持ちつつ,ESD的視点を涵養する学習プランとしてのポイントを明確化する検討を進め,それらの成果に関して,論文発表や国内外での学会での口頭発表も行った。 (A),(B)のそれぞれの内容に関して,学習プラン化を念頭に置いた知見の学際的な体系化や,それに基づく新しい授業提案(『雨』と季節など),その実践・検討を順調に進めることが出来た。なお,秋から冬への季節の遷移期の気象・気候に関しては,(学会での口頭発表の段階ではあるが)日本海での初冬の冬型時の降水に関わる気象過程やシベリア気団の季節的急成長時に見られる特徴を明らかにするなど,季節サイクル自体の理解を格段に深める成果も得られるなど,当初の計画以上の進展も見られた。 なお,ESD学習プラン集の暫定版に関しても,気象気候教育・文化理解教育自体としての新しい提案性をも併せ持つ詳細な冊子資料(「日本の秋から冬への遷移期の気象特性と古典文学にみる季節感に関する学際的授業の開発」(佐藤紗里・加藤内藏進,全86頁,2012年11月))を作成して近隣の小中高の学校現場の教員や関連研究者等に配布する等,概ね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
H25年度には,H24年度までの成果や様々な問題点を踏まえて,内容や方法論の更なる改善を図りながら,「現在までの達成度」の欄に記した課題(A)~(C)を発展的に継続する。これらを通して本研究の最終成果を取りまとめ,研究成果報告書,学会口頭発表,論文等で発表するとともに,『東アジアの気候環境の成り立ち』とその季節サイクルが醸し出す『多彩な季節感』を素材として,多面的・総合的な視点を学校現場で育むための『ESD教材・学習プラン集』(最終版)を作成する(印刷等で配布)。これは,通常の研究成果報告書と学習プラン集とを合体させたものにする予定であり,学習プラン集には,児童生徒が使用する教材,及び,指導者のための解説,双方の内容を必要に応じて含むものを想定している。但し,総合地学教育・文化理解教育自体の新しい興味深い提案性をも併せ持つ顕著な成果が得られた場合には,『冊子』はそのテーマに特化して作成し,その他のテーマは学習プラン集の代わりに論文や口頭発表・教員研修会での提示とするなど,本研究成果が学校現場により効果的に還元出来るよう,臨機応変に対応したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度に「次年度使用額」が4万円ほど生じた。ところで,これまでの研究成果を振り返った結果,ドイツの民謡にみる季節感と季節の特徴を日本と比較することによって,季節の変わり目に注目した気候系と季節感に関する理解を更に深めることも大変興味深いと認識するようになった。そこで,H24年度に使用予定であった前述の額を,H25年度当初にフライブルク(ドイツ)の『ドイツ民謡研究所』で資料収集を行うための旅費の一部として使用することとした。 このように,次年度は,当初計画にほぼ沿って,研究資料入手(野外調査等も含む)やその分析・知見の再体系化や教材開発・授業実践・分析のための経費(消耗品,旅費等),成果発表や研究打ち合わせのための旅費,成果報告書や論文別刷(学校現場等への配布用)等に,研究経費を使用する予定である。
|
Research Products
(17 results)