2011 Fiscal Year Research-status Report
音カメラを用いた新しい音楽実技指導法の開発とその成果の脳生理学的検証
Project/Area Number |
23650534
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中山 裕一郎 信州大学, 教育学部, 教授 (80155895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 忠彦 信州大学, 教育学部, 准教授 (10313818)
小野 貴史 信州大学, 教育学部, 准教授 (10362089)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 音カメラ / 音楽実技指導 |
Research Abstract |
「音カメラ」とは,音の大きさや周波数を色や丸い図形の大きさで視覚化することができる装置である。カメラと5つのマイクロホンをもち,音がそれぞれのマイクホンに到達する時間差から音源の方向を特定し,カメラから取り込んだ画像の上に,音の情報を表示させることができる。もともと工業用に開発されたものであるが,「音カメラ」を音楽教育の実技指導の場面で活用することができるのではないかと考えたことが本研究のきっかけとなった。なお,本研究は,(株)熊谷組と共同で研究を推進している。 平成23年度は,音楽活動の様々な場面での音の視覚化を試みた。箏,管楽器(サクソフォーンなど),打楽器(大太鼓など),鍵盤楽器(ピアノなど)の楽器音の視覚化では,楽器本体の複数の箇所から音が発生していることを確認することができた。特に,箏については,箏の下部からの響きが目立つことから,箏は立奏台を用いて演奏した方が,音響効果が良いのではないかという仮説を立てることができた。声楽の場面では,最初の実験では比較的残響が少ない演習室で行ったが,壁からの反射音がノイズとなってしまったため,後半の実験では,無響音室にて実験を行い,データの精度を高めた。いわゆる響きのある頭声発声と,話声に近い地声の違いについての分析を試みるという実験で,母音を用いて4秒ほど声を伸ばし,音程を一音一音上げていく方法でデータを取った。データの分析には時間がかかるため,現在も一部解析中であるが,歌声は口からだけではなく,頭部や胸部,そして腹部,一部には足部からも音が発生していることを確認することができた。特に,胸部における響きが目立つことから,発声指導においては,胸部を意識させるという方法もあるのではないかという仮説を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「音カメラ」を用いた実験では,(株)熊谷組の協力を得て,順調に実験に入ることができた。最初に残響が少ない演習室で行った実験は,反射音がノイズとなってしまい,データの解析が思うように進まなかった。しかし,後半は,無響音室を用いて実験を行うことにより,データの集積は順調に進んでいる。脳機能計測については設備の関係で,試験的な実験段階にとどまっているが,その準備は整っている。
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Strategy for Future Research Activity |
実験は無響音室を用いて行うことが望ましいことから,実験は短期間に集中的に行う予定である。声楽については,響きのある声は体のどこの部位から発生しているかについて,平成23年度に始めた実験データの分析をさらに進め,より精度を高めての第二次の実験に入る予定である。楽器音については,対象とする楽器を精選して実験を行う予定である。今後は,「音カメラ」の教育的効果を検証するために,NIRSを用いた脳計測機能を含めていく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため,次年度使用額が生じた。次年度は,この経費を含めて使用することとする。脳機能計測の場面で脳機能計測装置(NIRS)をレンタルし,使用する予定である。そのほか,実験に必要となる楽器や備品の購入,楽器の音響学にかかわる基礎的な文献や脳機能計測にかかわる文献,そして音楽教育にかかわる文献を購入する予定である。旅費は資料収集や学会発表にかかわり必要となる。
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