2012 Fiscal Year Research-status Report
音カメラを用いた新しい音楽実技指導法の開発とその成果の脳生理学的検証
Project/Area Number |
23650534
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
中山 裕一郎 信州大学, 教育学部, 教授 (80155895)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齊藤 忠彦 信州大学, 教育学部, 准教授 (10313818)
小野 貴史 信州大学, 教育学部, 准教授 (10362089)
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Keywords | 音カメラ / 音楽実技指導 |
Research Abstract |
「音カメラ」は,もともと工業用に開発された装置であるが,楽器の音や人間の声を視覚化すことができるため,本研究では,音楽教育の具体的な場面を想定しての実験を行っている。平成24年度は,人間の声に注目し,体のどこの部位から放射されているのかについて検証した。実験は無響室で行った。被験者は専門の声楽経験がある20代の女性とし,母音「ア」で音階を歌うという課題で, 2オクターブを一音ずつ計測した。話声(いわゆる地声)と響きのある歌声との2つのパターンで比較した。その結果,次の三点が明らかになった。一点目は,声は頭部のみではなく,胸部や腹部から放射されていることを確認した。特に胸部からの放射が目立った。声帯から口腔,鼻腔で共鳴した音が脊柱を通り肋骨へ伝道し,肋骨の左右合せて24本の骨から振動が伝わっている可能性がある。二点目は,音高によって,声が放射される場所の移動は認められず,低音域から高音域まで,頭部と胸部が中心となっていることを確認した。これまで高音域は,頭部の高い位置に声を当てるように指導されてきたが,実際には音域による移動は見られなかった。三点目として,「歌声」と「話声」の違いについては,「話声」は高い周波数における倍音成分が相対的に大きい傾向にあり,それが腹部あたりに拡散して見えることがあるが,基本的に声が放射される部位は頭部と胸部で,高音域になるにつれて頭部からの放射が強調されるというような現象は「歌声」「話声」ともに見られなかった。これまでの音楽教育における発声指導の場面で,「頭声発声」「頭声的発声」という言葉を用いてきたため,声は頭部から出ているというイメージを持たせてしまいがちであったが,実際には,声は頭部や胸部,そして腹部からも放射されているという事実を発声指導の場面で伝えていくことが必要となるだろう。なお,本研究は,(株)熊谷組との共同研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(株)熊谷組の協力を得て,音カメラを用いた実験を予定通り行うことができた。平成24年度は音楽教育の中でも一番扱う時間が多い歌唱分野に注目し,発声にかかわる実験を予定通りに行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
人間の声の放射部位を探る実験をさらに重ねていく予定である。被験者を増やして全体的な傾向をつかみたいと考えている。また,声楽を専門とする人の声の放射部位の特徴もとらえたい。なお,教育効果については,NIRSを用いた検証をあわせて行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度末(3月末)に(株)熊谷組との打ち合わせを行うことができず,旅費として予定していた予算が未使用額となっている。未使用額は平成25年度の請求額と合算し,NIRSのレンタル費や実験にかかわる備品,被験者への謝礼,および資料収集,(株)熊谷組との打ち合わせ,学会発表などの旅費として使用する予定である。
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