2011 Fiscal Year Research-status Report
経験学習における学習者の迷いを最適化する"相互作用制御"教材設計法の開発
Project/Area Number |
23650547
|
Research Institution | Advanced Institute of Industrial Technology |
Principal Investigator |
網代 剛 産業技術大学院大学, 産業技術研究科, 助教 (00513722)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
Keywords | 教育工学 / インストラクショナルデザイン / ゲーミングシミュレーション / 経験学習 / eラーニング |
Research Abstract |
本研究は,経験学習における学習者の迷いの制御である.平成23年度は,複数の異なる学習内容についての,ゲーム形式による教材を設計し,それぞれの学習内容に応じた学習モデルに準拠した上で,発話のプロトコル分析による状態検出を行った.網代・松田(2011)『ゲームの形態とプレーヤの特性との交互作用に着目したゲーミング設計技法に関する基礎研究』(日本シミュレーション&ゲーミング学会2011年度秋季全国大会発表論文集)では,ゲーミングシミュレーションにおけるゲームの設計技法の新たな知見の獲得を期待し,同じ対象を扱った2種類のゲーム(『ファイヤーファイター』と『クロスロード』)について,プレーヤのディスカッションを記録し,発話の内容を比較することで,両者のディブリーフィング以降の展開の違いを明らかにし,ゲーム設計技法への知見を抽出した.網代・松田(2011)『学習者のディスカッションの記録による循環的学習モデルにしたがった学習状態の検出』(日本教育工学会研究報告集JSET11-4)では,実務家修士課程の学生を対象とした数学基礎教育において,学習者の状態に応じて動的に対応できる学習支援プログラムの設計技法の確立に向けて,学習者のディスカッションを記録し,発話の内容を循環的学習モデルおよび数学的な見方・考え方にしたがって分類し,学習状態を検出した.網代『AIITにおける撮影スタジオを用いたデザイン教育の実践報告』(産業技術大学院大学紀要第五号)では,造形におけるプロダクトデザイナではない人材が,プロダクトデザインに参加し,有為な知見を創造できる手段として,プロダクトの撮影を通じて,プロダクトを評価するコミュニケーション手段の確立を目的とした,撮影スタジオを使用した実験的教育についての,学習者の発話のプロトコル分析の結果を報告した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は,概ね計画通りに進行している.平成23年度計画は,ゲーム教材発問の要件(因子)抽出(A),学習成果の評価法確定(B),学習者の状態検出法の確立(C)ゲーム教材発問の要件と学習成果の組み合わせによる評価(D)および学習成果と学習者の状態の組み合わせによる評価(E)である.ゲーム教材発問の要件(因子)抽出(A)については,たとえばエンタテインメントにおけるシミュレーションゲーム等を調査し,個々のコマンドにおける,意思決定から結果に至る過程の描写,現状から目的達成までの見取り図の描写等の知見を用いて,数学教材の試作-実践-評価をくりかえし実施した.学習成果の評価法確定(B)については,たとえば,数学的な見方・考え方(松田稔樹(1993)「教授活動モデルに基づく授業改善」,坂元昂監修・牟田博光編『教育システム工学 第1巻・教育システムの設計と改善』,第一法規出版)等を精査し,学習内容を詳細化し,複数の学習経路を持つ全体の見取り図を作成し,学習内容間の学習者の必ずしも一定方向でない移行をモデル化した.学習者の状態検出法の確立(C)については,プロトコル分析法,テキストマイニング法,脳波の計測方法,学習者の行動記録の方法について研究した上で,(B)で定めた学習モデルを用いて,検出すべき状態を特定した.ゲーム教材発問の要件と学習成果の組み合わせによる評価(D)については,数学教材において,5名程度の学習者によるディスカッションにおける発話内容の,収束と発散をプロトコル分析により明らかにする手法を確立しつつある.学習成果と学習者の状態の組み合わせによる評価(E)については,たとえば,撮影技法においては,課題への到達経路を,学習者に提供された選択肢に対する結果について被写体に目盛りを付すなどして定量化した上で,学習者の試行と発話を時系列で評価する技法を確立しつつある.
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度前半は,予備実験の最終段階として,これまで試作を重ねてきた,数学,撮影技法,発想法それぞれの学習コンテンツを,WEB上に実装し,これまで,教授者の同席,もしくはグループ学習によっていた実験を,独習の環境で実施可能なものとする.あわせて,テキストマイニングおよび脳波計測を用いた,評価を実施し,これらの状態検出方法について,本研究遂行における問題点および対策を確定させる.これらを総合した上で,実験に用いるパラメータおよび評価方法を定め,それに応じた標本数を定めた実験計画を作成する.現在の課題は,数学については,個別の学習内容については,ほぼ試作が完了しているが,学習内容をつなぐための,仕組みづくりに取り組んでいる段階である.また,撮影技法については学習者による試行と発話を組み合わせると同時に,演習中に,学習者の随意に参照できる技法解説のインターフェイスを開発中である.発想法については,テキストマイニング法を用いて,試行の発散と収束とを視覚的に表現するインターフェイスを開発中である.これらはともに早いもので7月,遅くとも8月末頃までの完成を見込んでいる.平成24年度後半は,実験計画にしがって実験を行う.この時,実験および解析が円滑に遂行できるよう,学生等による研究補助者をチーム体制で整備し,効率化を図る.また,研究補助者が単なるデータ入力等の単純労働のみに終始してしまわぬよう,能力や興味関心等をふまえて,研究補助者にとって有意義なものとなるよう配慮する.また,年度の途中より,学会発表・論文投稿等を,前年度以上に積極的に行い,研究成果の公開につとめる.
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は,機材については,実験用教材のWEB実装用機材,実験用機材を整備し,人件費については,年度後半における研究補助体制を整備する.また,旅費等については,国内学会での発表を予定している.はじめに,WEB実装用機材については,オーサリングソフトおよび画像処理能力の高いPCを整備する.実験用機材については,実験用PC,脳波計,画像処理ソフト等を整備する.特に脳波計は近年数万円程度の製品が市販されており,数セットを揃えることで,実験の効率を向上させると同時に,グループ学習の記録を可能する.研究補助体制については,学生から有志を募り,6カ月程度の期間,原則的に固定のメンバーによるプロジェクトとして体制を整備する.具体的な業務内容は,機材搬入等の実験環境の整備やデータ入力作業に加え,メンバーの能力や希望に応じて,実験結果の解釈等のディスカッションや,今後に向けての改善課題の抽出,実験時のインストラクション等を予定している.この時,産業技術大学院大学の規定に則り,研究補助者には謝礼を支給する.研究成果の公開について,国内学会における発表,論文投稿を実施する.研究の進捗によっては,次年度中に国際会議での研究成果発表を行いたい.すべての研究費の執行について,万が一にも不正な使用が発生しないよう厳重に注意すると同時に,産業技術大学院大学事務室と連絡を密にし,適正な執行を心がける.
|