2012 Fiscal Year Research-status Report
授業実施時のストレスから捉える教師の力量形成の過程
Project/Area Number |
23650553
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Research Institution | Niigata University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
遠山 孝司 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (50468972)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西原 康行 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 教授 (50339959)
吉田 重和 新潟医療福祉大学, 健康科学部, 講師 (30549233)
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Keywords | 教育心理学 / 教師教育 / 教育工学 / 教師の熟達化 / 教職課程 / 生理的指標 |
Research Abstract |
平成23年度より25年度(予定)にかけて「授業実施時のストレスから捉える教師の力量形成の過程」という研究テーマについて科学研究費補助金(挑戦的萌芽研究 課題番号:23650553)の助成を受け,研究を進めている。 研究の目的は,教員のとしての力量を発達させるごく初期の段階にあたる教職課程を履修している大学生の授業実施時の生理的指標の変動から教員の発達の初期段階にある人間が授業をすることのどのような部分にストレスや緊張,困難さを感じているのかを検討し,その後,授業の経験を積み重ねることで,授業実施時の緊張やストレスはどのように変化するのか,授業経験を積み重ねた経験教師と教育実習生や新任教師が授業実施時に感じるストレスを感じるポイント,感じるストレスの大きさ,感じ方には違いがあるのかなどを検討することである。本研究は最終的には教員養成課程での教師の力量形成を可能にするカリキュラムの提案を目的としている。 24年度は,授業者としては初心者である授業経験の無い大学教職課程の学生が授業をする際にどのような部分に緊張(ストレス)を感じているのかを23年度に引き続きビデオカメラと心拍計を用いてデータ収集した。24年度からの研究として,授業後のリフレクションの内容をインタビューしている。自分が行った授業についてのビデオだけを見てリフレクションを行った場合と,生理的指標である心拍(R-Rインターバル)の変動から算出したリラックス率の変動グラフとビデオを見てリフレクションを行った場合では,後者の方が明らかにリフレクションの内容が精緻になることが示された。また,初めての授業を行う際に授業者が一つ一つの教授活動をばらばらに捉えており,一つの活動を終えるたびにリラックスするものの,個別の活動を始めるとすぐに緊張している等の授業者の授業イメージも明らかにされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は23年度の実験協力者に続けて,生理学的データの収集を伴う模擬授業のビデオ撮影を繰り返し行い,生理的指標とビデオをキューとするリフレクションのインタビューを行ってきた。その中で繰り返し模擬授業を経験する中で,授業者の精神的作業負荷や授業のイメージがどのように変化してきているのかが分析の中で明らかにされつつある。 ただし,データを収集できた人数が十分に多いとは言いがたいため,24年度から新たに複数の実験協力者の協力を得て,同じ形態でのデータ収集を行っており,彼らの協力を得るデータ収集は25年度も継続して行う。 また,24年度から模擬授業を経験する調査協力者の協力を得て,同じ授業を2回繰り返すことで,授業者の精神的作業負荷や授業に対する意識がどう変わるのかをリフレクションするため,同一内容を同じ日に2回繰り返すという状態での作業負荷の変化データは収集しており,こちらのインタビューの準備は整っている。 25年度の現職教員または講師を対象としたデータ収集とその分析,そして教員としてのノービスである教職課程に所属する大学生との比較に向けておおむね研究は順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度収集のデータのうち,24年度から参加している実験協力者を対象としたインタビューが必要であるほか,知見の一般性を高めるため,24年度と同様の手続きを用いたデータ収集を行う必要がある。 また,教員としてノービスである教職課程の大学生の模擬授業と比較するために現職教員の通常の学校での授業において,授業のビデオ撮影と生理的指標データの収集,その後のリフレクションを伴うインタビューを行う。 そして,3年間に渡って収集してきたデータから,教職課程の学生が教師としての力量形成のごく初期の段階では,授業実施のどのような部分に苦手意識を感じているのかと,その後授業実施の経験を積むことで苦手意識やストレス,授業を捉える枠組みなどがどのように変化するのか,熟練教員の受容実施時の最適機能領域(ZOF)におけるストレスの感じ方などについて,得られた結果を取りまとめ,成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
物品費の使用計画は以下になる。授業時の授業者の動きと生理的指標の変動を捉えるための研究資材については,おおむねそろったため不足分及び消耗品,収集したデータの記録媒体を購入する。あわせてデータの分析及び発表に必要なアプリケーションのアップロードを行う。 旅費の使用計画は以下になる。23年度から蓄積した知見を発表するため,複数の学会及び研究会へ参加する。また,25年度は現職教員のデータを収集するため,勤務校でのデータ収集のための旅費と,現職教員が研究代表者の勤務する大学でリフレクションとインタビューを行うための旅費としても研究費を充てる。 謝金の使用計画は以下になる。24年度及び25年度に模擬授業を行い同時に生理的指標のデータを収集した学生にインタビューを行うため,彼らに実験への協力に対する謝金を支払う。また,25年度にデータを収集する現職教員についても実験への協力に対して謝金を支払う。
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