2013 Fiscal Year Research-status Report
多人数の対話を有機的につなぐ学生スタッフ媒介システムを多角的に可視化する映像制作
Project/Area Number |
23650554
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
牧野 由香里 関西大学, 総合情報学部, 教授 (30331698)
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Keywords | 対話型授業 / 多人数授業 / 学生スタッフ / 十字モデル / 映像制作 / 授業システム / 市民性教育 / 高等教育 |
Research Abstract |
本研究では、日本の大学教育に一般的な多人数の講義科目において、教師・受講生・学生スタッフの対話による協同的な授業づくりをめざしている。対話による協同的な学びをデザインする方法として「多人数の対話を有機的につなぐ学生スタッフ媒介システム」を開発した。以下、この授業システムを「対話デザイン」と呼ぶ。 対話デザインを実践する授業では、教師が一斉講義をするだけでなく、受講生一人ひとりが講義内容をふまえて推論する。学生スタッフは一定の評価基準を用いて、代表的な意見の中から質の高い意見を抽出し、さらに「十字モデル」を設計図として、これらの意見を有機的につなぐ。 しかし、学生スタッフが担う作業は複雑であり、また授業時間外に展開されるため、対話デザインの全体像は見えにくい。そこで、第三者がこの授業システムの仕組みを理解できるように、あるいは、他の大学教員が自分の授業に対話デザインを導入できるように、具体的な手順を多角的に表現する映像コンテンツの制作に取り組んだ。 平成23年度から平成25年度にかけて、日本語オリジナル(6本)と英語字幕版(4本)の計10本のビデオ教材を制作し、DVDにパッケージ化した。公開に先立ち、これらのビデオ教材を授業実践において試用した。学生スタッフの事前トレーニングに加え、学期初めに受講生に対して通常の多人数科目と異なる授業システムの仕組みを詳しく説明した結果、参加者が対話デザインの目的意識を共有し、学習成果の向上が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り、すべての映像コンテンツが完成し、DVDのパッケージ化も完了した。DVDに含まれるコンテンツは次の10本である。 1.対話デザインの授業システム、2.学生スタッフの作業(1):フィードバックの準備、3.学生スタッフの作業(2):採点の判断方法、4.学生スタッフの作業(3):十字モデルで対話をつなぐ、5.議論構築モデル、6.チームワークの効果、7.Dialogue Design System、8.Video Material 1 (How to prepare for feedback)、9.Video Material 2 (How to grade the idea cards)、10.Video Material 3 (How to organize the ideas with MCC) これらの研究成果について国内の学会等(大学教育学会、大学教育研究フォーラム)にて研究発表を行い、希望者にDVDを無料配布した。また、大学のFD研修会等(びわこ学院大学FD研修会、宇都宮大学FDワークショップ)に招かれた機会にもDVDの紹介、配布を実施した。
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Strategy for Future Research Activity |
DVDの配布を継続するとともにYouTubeでの公開を予定している。また、平成26年6月には国際会議(EdMedia 2014: World Conference on Educational Media and Technology, Tampere, Finland)にてフィンランド人研究者との共同発表(Dialogue Design System in a Mass Lecture Class: Bridging the Cultural Gaps in Pedagogy through Operation Videos)が確定している。この発表では、対話デザインの授業システムについて説明するとともに、オペレーションビデオとしての映像コンテンツを紹介する。一方、共同研究者はヨーロッパの高等教育の視点から本研究の成果について批評する。この機会に新たな研究課題の開拓にむけて参加者との国際交流をはかりたいと考えている。たとえば、本研究が提案する対話デザインの授業システムを国外の大学教育ネットワークに拡張する「グローバル対話デザイン」という試みを検討している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画通り、すべての映像コンテンツが完成したが、英語の字幕について計画を変更した。予定では、授業システムを解説する中心的なコンテンツ1点のみに字幕をつける計画だった。しかし、学生たちの手作りにもかかわらず、予想以上に質の高い作品が完成したことをうけて、運用手順のビデオ教材3点にも字幕をつける方針に切り替えた。結果として、平成25年度の進捗は映像コンテンツのパッケージ化と国内の学会発表2回にとどまった。 国内外の学会発表や研究交流を継続するための出張旅費と翻訳費用が見込まれる。なお、平成22年度に研究計画調書を執筆した時点から3年間が経過しており、本研究の「多人数の対話を有機的につなぐ学生スタッフ媒介システム」はさらなる進化を遂げた。この点を補足する資料を制作するための人件費(外部委託やアルバイト)が見込まれる。
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Research Products
(4 results)