2011 Fiscal Year Research-status Report
宇宙についての疑問における研究者と市民の差異に関する国際比較研究
Project/Area Number |
23650560
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
戸田山 和久 名古屋大学, 情報科学研究科, 教授 (90217513)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 康雄 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (30135298)
齋藤 芳子 名古屋大学, 高等教育研究センター, 助教 (90344077)
唐沢 かおり 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (50249348)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 科学技術社会論 / 市民の科学理解 / 科学リテラシー / 科学コミュニケーション / 天文学 |
Research Abstract |
本研究は、天文学をフィールドとして、我が国の市民が科学者に解答を期待する宇宙に関する素朴な疑問がどのような構造的・認識論的特質をもっているのかを国際比較を通して明らかにし、そこでえられた一般的知見を蓄積・発信することによって、研究者・市民間の科学コミュニケーションの質向上に貢献することを目的としている。平成23年度はその研究の初年度として、以下の研究活動を実施した。 ●サブプロジェクト1について、市民が抱く宇宙についての疑問の偏りに関する国際比較研究の準備を進めた。具体的には、(1)バルセロナ、トリノで収集した市民アンケートをそれぞれスペイン語・イタリア語から日本語へ翻訳するための下準備を進めた。(2)「宇宙100の謎」で収集した1000件以上の質問を、その主題(宇宙の始まり、ダークマター、超新星等々)によって細分類する暫定的な枠組みを構築し、同じ分類枠組みで海外データを分類した。●サブプロジェクト2について、「科学者を困惑させる問い」の構造的特質に関する認識論的分析の準備を進めた。具体的には、暫定的分析の分類枠組みが妥当なものであるかどうかをまず検討した。(1)そのために、本研究外部の天文学研究者に対するインタビュー調査を行った。(2)インタビュー調査の結果をもとに、科学者を困惑させる問いのパターン分類枠組みを再検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に関連する査読付き論文の掲載に至った点で当初の計画より進んでいるが、海外調査結果の翻訳を完了することができなかったため、概ね順調と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
●サブプロジェクト(1):市民が抱く宇宙についての疑問の偏りに関する国際比較研究の実施(1)一般向け天文学書、科学記事で好んで取り上げられている天文学関連の主題を分析することによって、科学者が市民に伝えようとする主題の傾向を把握する(2)前年度に明らかにした我が国における市民の宇宙に関する関心の傾向を、科学者が伝えようとする主題の傾向と比較することによって両者の差異を明らかにする。(3)海外データのさらなる収集のため、EuroScience Open Forumのダブリン大会に「宇宙100の謎」プロジェクトの活動と成果を紹介するブースを出展し、そこでダブリン市民から同様の疑問を収集し、データベース化する。(4)再度、国内外のデータを構造化・比較し、我が国における市民の宇宙に関する関心のバイアスを、専門家との対比、および海外との対比において明らかにする。(5)以上のバイアスを説明するための仮説を提案する。●サブプロジェクト(2):「科学者を困惑させる問い」の構造的特質に関する認識論的分析の実施(1)前年度に検討した、科学者を困惑させる問いの分類枠組みにしたがって、これまでに得られた該当する問いを分類集計し、市民が発する「科学者を困惑させる問い」のもつ特徴の量的把握を行う。(2)上記の結果と、天文学者インタビュー調査の結果を総合し、科学者を困惑させる問いの構造的特徴について認識論的な観点から分析を行う。こうした特徴がなぜ生じるか、それに科学者がなぜとまどうかの双方を説明するための仮説を構築する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が7330円生じているが、これは印刷製本費の節約によるものである。次年度の研究費は、海外調査結果の翻訳を完了させるための人件費、関連書籍の整備、ESOF等の海外における科学コミュニケーション関連行事への派遣、等に支出する。
|