2011 Fiscal Year Research-status Report
結晶構造解析に基づく弥生時代の青銅器破砕行為のプロセス復元
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23650570
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
福永 伸哉 大阪大学, 文学研究科, 教授 (50189958)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 勝義 大阪大学, 接合科学研究所, 教授 (50345138)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 弥生時代 / 古墳時代 / 青銅器 / 結晶構造解析 / 元素分析 |
Research Abstract |
2年計画のプロジェクトの1年目であるH23年度は、研究費の使用が可能になった6月下旬から、分析資料の選定と分析方法の検討を重ねた。まず博物館等において復元銅鐸の破砕実験が行われた事例を探索し、その実験資料を借用して破砕のメカニズムに迫るための破壊分析も含めた効果的な方法を探るとともに、下半期からは非破壊の範囲で実物資料の分析も併行させて行うこととした。具体的な作業内容と進行状況は以下の通りである。(1)分析対象資料の選択と借用(7月~9月)比較的近年に銅鐸破砕実験が行われ、その資料が保存されている兵庫県立考古博物館、桜井市教育委員会と交渉を行い、両機関から破砕実験銅鐸片を借用することができた。(3)資料分析の開始(10月~続行中)上記の破砕実験銅鐸片に加えて、いわゆる「邪馬台国畿内説」の有力候補遺跡である桜井市纒向遺跡、同市大福遺跡の出土銅鐸片を借用し、X線回折による構造解析、元素分析型走査型電子顕微鏡による組織形態および元素分布調査、硬度試験による機械的特性を調査した。現時点までに、青銅(Cu-Sn)系素地に鉛(Pb)が約5~8wt%含まれており、当時において鋳込み性向上のためのPb添加が行われていたと推察できること、結晶粒サイズからは、当時の冷却速度は現在の砂型鋳造に比べて著しく小さいと推定できることなどの成果を得ている。分析は続行中である。 H23年度は実物資料(文化財)の破壊分析が難しいという問題に直面しているが、破砕実験資料でさまざまなシミュレートをすることは可能であるので、有効な分析方法の検討を深めて、H24年度の実物資料の効果的な分析につなげられるようにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
課題の採択時期がややずれ込んだことにより、資料の所蔵機関との交渉が遅れたが、先方のご厚意で、銅鐸破砕実験に用いられたレプリカ資料の借用・分析については、予定通りに作業が進行している。ただ、実物資料の方は貴重な文化財であるだけに、所蔵機関から破壊分析の許可が予想以上に得にくいという問題に直面している。もっとも、当初からこの点はある程度予測されたことであり、その場合はレプリカ資料の徹底的な分析を通じて、方法論的な提起を行うことを到達目標とすることにしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究が中心的な考察対象として念頭においているものは、弥生時代終末期に人為的に破砕された可能性が指摘されている銅鐸であるが、同じ時期に日本列島に存在する他種の青銅器のなかにも、中国銅鏡のように破砕されたと考えられるものがあり、銅鏡と銅鐸の破砕行為には関連がある可能性が指摘されている。銅鏡は破面がよりシャープであり、銅鐸の破面状況とは大きく異なっている。銅鐸実物資料の破壊分析が困難な場合は、破片資料の入手が比較的容易な中国鏡の破砕のメカニズムを分析することによって、銅鐸破砕片との比較を行うという手法を採用したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H23年度は、東日本大震災の復興財源との関係で、当初配分額の3割が執行留保の状態となっていた事情があり、H23年度に計画していた青銅器の調査旅費の執行を極力控えていた。執行留保は9月下旬に解かれたが、学務などとの関係で、その後は十分な日程が取れなかったため、調査をH24年度に行うこととし、その経費を中心にH24年度に予算を繰り越した。その他は、当初計画にしたがって執行する予定である。
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