2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23650574
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Research Institution | 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館 |
Principal Investigator |
今津 節生 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, 課長 (50250379)
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Keywords | 文化財の健康診断 / 検査 / 予防 / 三次元データ / X線CTスキャナ / 3Dプリンタ |
Research Abstract |
文化財の“保存と活用”が求められる状況にあって、展示や輸送に伴うリスクは増大し続けている。X線CTをはじめとする高度検査装置の活用は医療分野において検査・予防システムに大変革をもたらしたように、文化財の予防保存に飛躍的な変革をもたらす可能性がある。本研究は、X線CTをはじめとする高度検査装置を文化財に適用することによって、文化財の検査・予防・保護システムを新たに構築することを目的としている。 先ず短時間に正確で客観的な判断を下すための健康診断システムの開発を行った。X線CTや精密三次元計測による精密な三次元デジタルデータを解析しながら、虫害痕跡・錆の進行・変形などの痕跡、過去の修理履歴を把握した。また、三次元情報に基づいて立体表現して内部構造を観察する方法を用い、美術史・文化財科学・保存修復・博物館学の研究者による検検討会を開催した。この検討会では、文化財の製作技術を検討すると共に、劣化状態や過去の修復履歴を検討した。さらに、3Dプリンタを用いて三次元模型を製作して詳細な検討を行った。 一例として長崎市聖福寺の御本尊釈迦如来坐像および迦葉尊者立像・阿難尊者立像を調査し、諸像のデータ解析を進めた。その結果、象内に心臓や肺に見立てた金属製の五臓をはじめとする内臓模型を納めた「生身仏」の作例であることが判明した。このような具体的な調査例を基に、文化財の非破壊調査を健康診断システムにまで発展させるための具体的な方法の開発を目指している。実際には、透過X線による全体把握を基礎にしながら、X線CTを用いた観察(内部構造、製作技法、劣化状況、修復履歴など)を実施した。さらに、この3Dデータを三次元プリンタで打ち出して作成したデジタル複製品を基にした詳細な検証を実施した。
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