2011 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア複合体II活性制御による造腫瘍抑制効果の解析
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23650602
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
石井 恭正 東海大学, 医学部, 助教 (20548680)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / エネルギー代謝 / がん制御遺伝子 / 活性酸素 / 低酸素シグナル / エピジェネティクス / ヒストン / メチル化 |
Research Abstract |
ミトコンドリア電子伝達系複合体IIのSDHCサブユニットにアミノ酸点変異(V69E)を導入したマウス胎児細胞株とその自然形質転換株、およびそれらのコントロール株を取得した。長期間の軟寒天培養中に取得された自然形質転換株は、樹立後凍結保存し、融解後再培養を開始して1~2か月間は、樹立時の形質を再現できないことを確認した。さらに、このような変化はエネルギー代謝制御に影響されるエピジェネティクス変化に依存していることを確認した。最近、神経膠腫(グリオーマ)や骨髄性白血病等において、イソクエン酸脱水素酵素(IDH: isocitrate dehydrogenase)の遺伝子変異が2-ヒドロキシグルタル酸(2-HG)の蓄積を誘導し(Nature, 2009. 462: 739-744, Cancer Cell, 2010. 17: 225-234)、ヒストン脱メチル化酵素の阻害を惹き起こすことが続けて報告されている(Cancer Cell, 2011. 19: 17-30, EMBO reports, 2011. 12: 463-469, Nature, 2012. 483: 474-478, 479-483, 484-488)。我々は、ミトコンドリア電子伝達系複合体II変異がIDH変異と同様にして、パラガングリオーマなどの造腫瘍発生に寄与していると考え、これらの変化を癌幹細胞の特性化として位置付け、今後の研究推進に尽力していく。当該研究に関わる一部の成果について、現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
3月11日、東日本大震災の被災で、自然形質転換株の取得を目的に長期培養を行っていた細胞が死滅し、さらに、その後の計画停電実施とその対応の際には、付属病棟への非常用電源供給が最優先となり、新年度スタート時に細胞培養を開始することが出来ず、実験開始が遅れた。また、標準マウスより神経質で繁殖の難しいTet-mev-1マウスは、計画停電の影響による空調温度の変化や明暗周期のズレによる影響か、その直接的原因は不明であるが4月から10月までの約半年間に新規マウス個体の取得が滞り、その飼育・繁殖改善のために苦慮した。その中、実験計画実施内容の遅れを取り戻すため、既に取得に成功していたTet-mev-1マウス同様の変異SDHC E69細胞株(Cancer Research, 2005. 65: 203-209) を用いて自然形質転換株および腫瘍組織細胞株の取得に尽力し、その後はおおむね順調に進展した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述した通り、東日本大震災の影響により昨年4月から10月までの期間において、新規マウスの取得が十分に行えなかった。この為昨年度は、既に取得していたSDHC E69細胞株(Cancer Research, 2005. 65: 203-209) を用いて自然形質転換株および腫瘍組織細胞株の取得に尽力し、現在に至っている。2012年度は、これらの細胞株を用いて2011年度の交付申請書に記した研究実施計画に従い、ミトコンドリア電子伝達系複合体II変異に起因するエネルギー代謝変化に影響される低酸素誘導因子(HIF-1)活性制御の機序解明に尽力する。さらに、これら代謝制御の副産物α-ketoglutarate(2-KG)産生とエピジェネティクス制御の相関機序を明らかにする。詳しくは、最近刊行の学術論文でも明らかにされているIDH変異に起因する2-hydroxyglutarate(2-HG)の蓄積に誘導される脱メチル化酵素活性の阻害機序との比較解析を行いながら、これらのエネルギー代謝産物の測定、酵素活性の測定、ヒストン翻訳後修飾酵素活性の測定、ヒストンメチル化存在量の測定を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
東日本大震災の被災による研究計画の遅れにより、2011年度は実施状況(収支状況)報告書の通り、予定していた人件費が消耗品などの物品購入費に充てられた。2012年度は、2011年度の交付申請書の計画通り、細胞培養用消耗品・抗体購入費・生化学用酵素活性測定キットの購入に物品費を充て、実験補助員への謝金を人件費・謝金から施行し、その他経費を代謝産物量の測定を実施する委託研究費に充てる計画を立てている。
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Research Products
(13 results)